なお、今回は公式プログラム「Social Insiders」(デジタルマーケティング業界のインフルエンサー施策)にてご招待いただいての参加で、日本からは「THE GUILD」の代表を務めるUXデザイナーの深津貴之さん、LINEの砂金信一郎さん、そして天野の3名が現地でのレポートを担当しました。
さて、Adobeさんといえばフォトショップやイラストレーターといったサービスを思い浮かべる方も多いと思うのですが、今回のイベントではAdobe製のマーケティングに関連した最新ツール、メソッド、ケーススタディの紹介などがなされました。そういった領域におけるソリューションも非常に革新的です。
今年のサミットのテーマは「Experience Makers」。いまマーケティングにおいて最も重要なのが「Experience」であるというメッセージを押し出したものになっています。
それを理解するための補助線として、デジタルマーケティングの領域で最近目にする機会が増えてきた「OMO」という概念があります。Online merges Offline、すなわちオンラインとオフラインの融合というわけです。
オンラインとオフライン、デジタルとリアル……そのような区分けが既に意味として失効する中で、「顧客体験(CX: Customer Experience)」がマーケティング上の最重要課題として着目されるようになりました。
ユーザーが自分達でシェアして情報を広めていく時代になり、「エクスペリエンス」がさらに大切になるのは間違いないと感じていた僕自身のリサーチの問題関心も、今回のテーマに強く呼応しました。
例えば「Humanizing the Digital Experience with AI & Personalization」というセッションでは、顧客体験の悪さが理由でユーザーにブランドスイッチされることによって、1.6兆ドルの損失が企業に生まれているというデータが紹介されました(出典:アクセンチュア)。
だからこそ、そうした体験を生み出せるか(良きExperience Makerでありうるか)どうかが、企業の競争力を最もドライブする源泉になることを強く意識しなければならないのです。
データから見るミレニアル世代のオンラインショッピング事情
ミレニアル世代に関するセッションでは、こちらのデータが示されました。
この図では各国の小売りの市場規模と、そこにEコマースが占める割合(%表示)とが示されています。まず目につくのは、中国のEコマース率の高さ。世界一のデジタルディスラプションが起こる国として注目される機会も増えていますが、やはりデータでもその傾向は健在です。それに次いで高いのはイギリス。そして、アメリカと続きますが、10%を切ってしまいます。日本は7.3%となっています。
このように、一部の国を除いて、まだまだ世界的に見てもトランザクションの面では実店舗が依然として強いことが分かります。なお、スライドに示されている「Brick & Mortar」は平たく言えば、実店舗での販売を指します。Brickはレンガ、Mortarはレンガを積み重ねる際のつなぎとして使われる砂とセメントと水とを混ぜた材質を指していて、現在では、レンガづくりの建物はそう多くあるわけではありませんが、慣例的に使われています。
しかし、ミレニアル世代にフォーカスしてみると、そのオンライン志向はより目立ったものとなります。
ネットで情報を調べて実店舗で買う:43.1%
情報を調べるのも購買も実店舗で行う:19.6%
情報を調べるのも購買もオンラインで行う:19.4%
情報を調べるのはオフラインだが、購買はオンラインで行う:12.6%
その他:5.4%
まだまだ購買は実店舗で行う傾向が強いわけですが、下調べから購入までオンラインで完結する割合の高さが目立ちます。
どのように調べているかについてはここでは深掘りされていませんが、前回の原稿で紹介したキーワード「#タグる」のような情報との出会い方が増えているものと推測します。これまでは実店舗で店員・従業員から話を聴くことが重要だったわけですが、リアルな感想を求めて、口コミサイト、さらにはそこでさえ捕捉されないSNS上での声を信頼するようになっています。
私たちが行った調査(電通メディアイノベーションラボ「若年層のSNSを通じたビジュアルコミュニケーション調査」)でも、最も信頼する発信者は友人・知人であるという興味深いデータが見られました。
ソーシャルメディアも、そのブランドに関する一連の「体験」の中のひとつの重要なプロセスとして認識したうえで、SNSがユーザーのニーズの発火点になっているという傾向への対応を進める必要性はますます強くなってきています。