ビジネス

2018.05.15

ウォルマートの印フリップカート買収は「皮肉か賢明な戦略か」

fotomak / Shutterstock.com

米小売業最大手のウォルマートは(法人減税で得た)“棚ぼた利益”により、国内でより多くの雇用を生み出すはずだった。だが、同社はその代わりに、外国での雇用創出につながる巨額の投資を行うことにした──。

ウォルマートは先ごろ、インドのネット通販最大手フリップカートの株式77%を約160億ドル(約1兆7400億円)で取得すると発表した。だが、米国内で店舗の閉鎖や何千人もの解雇を進めるウォルマートのこの決断に対し、憤りをあらわにする労働運動家もいる。

労働組合が行う「Making Change at Walmart(MCAW、ウォルマートに変革を)」活動を率いるランディ・パラーツもその一人だ。「ウォルマートは法人減税の恩恵によって手にした約20億ドルの全額を米国内の従業員と店舗に投資せず、外国での事業拡大に多額の資金を投じ続けている」と批判する。

だが、ウォルマートのフリップカート買収は、まさに理にかなったものだ。買収はウォルマートにとって、インド電子商取引市場での足場固めになる。(アリババの経営にも関わった)ポーター・エリスマンは著書「Six Billion Shoppers」の中で、インドの電子商取引市場は中国を上回る規模になると予測している。

エリスマンは、インドの電子商取引市場は急成長するとしても、「より摩擦が多く、ビジネスを根付かせるには中国より長い時間がかかる」と指摘する一方、「長期的に見れば、そうした摩擦はインドで起業する全ての人たちにとって、最大の機会を提供するものになる」と語る。「問題が解決すれば、インドの電子商取引ビジネスが中国以上に重要な役割を果たすようになることは、想像に難くない」という。

大きな可能性

インドでは今後、所得階層別人口ピラミッドの最底辺に位置する人々の可処分所得が大幅に増加すると見込まれている。そしてその裏には、大きな可能性がある。期待できる利益が少なすぎる、あるいは進出するには事業経費がかかりすぎるといった理由で、見送られたり、諦められたりすることが多い可能性だ。

フリップカートはすでに、このピラミッドのそうした層から「富」を掘り起こしている。電子商取引の中国最大手、アリババから出資を受けるインドのネット通販大手スナップディールや、電子決済サービスのペイティーエムなどもそうだ。

エリスマンによれば、アリババと提携しているこれら2社は今後、インド市場に流入する中国製品を大幅に増やしていくことになり、「インド市場における緊張を高めることになると考えられる。“インド製”の製品に対する支援が大幅に強化されると同時に、中国製品に対する規制強化につながることもあるかもしれない」という。

インドの電子商取引市場ではすでに、ウォルマート最大のライバル、アマゾンも大きな存在感を見せている。フリップカート買収はウォルマートにとって、米国の納税者ではなく、自社株主のための賢明な戦略だ。

編集=木内涼子

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