ここで、参加したみなさんの感想を紹介します。
「見た目の湯よりも、戸籍の湯の方が入りづらかった。頭では全員男だし、法律的にもなんの問題もないってわかっているのにね。いかに自分が見た目にとらわれているかがよく分かりました(笑)」
「(体女性、心男性の)トランスジェンダーの自分が男湯にはいっても『違和感ないよ』って言ってくれた。広いお風呂に入ったのは13年ぶり。すごく嬉しかった!」
「私はシングルマザーなんですけど、なんだか一緒だなって。“シングルマザー”だからとか“LGBT”だからとか周りの目を気にしながら生きているところがある。そういうレッテルが本当に邪魔で、一人の人として付き合いたいよなって思いました」
湯上りには、「誰もが楽しめる温泉や温泉街ってなんだろう?」というテーマでワークショップを行いました(もちろん片手にコーヒー牛乳をもって)。多様すぎる性に触れた直後だからなのか、議論は白熱、ユニークなアイデアが次々と飛び出します。
たとえば「血液型でわける温泉」というアイデア。会場が一瞬きょとんとしましたけど、実はこれは男湯と女湯にしかわかれていない現状の男女二分法への強烈なアンチテーゼだったんです。「男女で分けるから大変なことになるんだったら、血液型でわけちゃえばよくない?」というわけです。これを聞いた会場は拍手と歓声が起きました。
そのほかにも、自分の希望や思考、属性をもとにたどっていくと「LGBTの方OK」「ペット連れOK」「タトゥーOK」といった、自分の理想のお風呂にたどりつける「フロー(風呂)チャート」。さらに、LGBTの人たちの気持ちが一番わかって、かゆいところに手が届くサービスができるのは当事者じゃないかという意見をもとに、別府市内の旅館などの施設が積極的にLGBTの人たちを雇用できるようにする「雇用促進事業」などのアイデアも。
入浴体験とディスカッションをあわせて3時間半。あまりにも濃密で、刺激的な時間でした。僕は去年認知症の状態にある方がホールスタッフをつとめる「注文をまちがえる料理店」というプロジェクトを立ち上げましたが、やっぱり「エンターテインメント」な仕掛けは大切だと改めて思いました。
こちらが「LGBTのことを考えることは大事なんです! さあ、ちゃんと考えましょう!」と気炎を吐けば吐くほど、人の気持ちは離れるもの。それよりも「難しい理屈はおいといて、まずはひとっ風呂」くらいのゆるい感じにしたのがちょうどよかったのかもしれません(これはバリバラ制作班、久保ディレクターの発案です)。なんというか、ちょうどいい湯加減というのは、ちょっといい加減なくらいがいいんでしょうね。
東京に帰ってから「レインボー風呂ジェクト」の話を、銭湯を経営している友人に話してみたんです。そうしたら「是非うちでもやりたい」と食いついてくれました。やっぱりLGBTの方の受け入れ方がわからなくて、すごく悩んでいたということでした。
僕は重ねて「“同じ釜の風呂に入る”ってすごいよかったよ」と伝えると、「それは同じ釜で“おなかま”、になるってことですね」と返してきたんですよ。くそっ、うまいこと言うじゃないか。ちょっと悔しいけど、ここで思いっきりパクらせてもらいます。同じ釜の風呂に入る“お仲間”の輪が広がっていけばいいなぁ。
番組を作らないNHKディレクターが「ひっそりやっている大きな話」
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