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国際モータージャーナリスト「ライオンのひと吠え」

フェラーリ488ピスタ

カモフラージュを施したフェラーリ488ピスタのプロトタイプを遠慮ない速度で走らせる──。

それは、オーロラを初めて見る感覚だ。一気に鳥肌が立ち、快感受容器が最大限になる。僕にとっては、伝説のテノール、ルチアーノ・パヴァロッティが、プッチーニのオペラ「トゥーランドット」で「誰も眠ってはならぬ」のクライマックスを迎える瞬間のような快感。

8000rpmまで回したフェラーリのツインターボ付き3.9L のV8エンジンは、パヴァロッティの最高音のように恍惚とさせる。この720psのエンジンは、トルクもなんと770Nmを発生する、フェラーリ史上もっともパワフルなV8だ。


今年の3月6日にジュネーブで発表された488ピスタ

今年3月にジュネーブ・モーターショーで発表された488ピスタ・プロトタイプを早速、フェラーリの本拠地、マラネロで試乗できた。ここにあるフィオラーノ・テストコースでは、ピスタはハイブリッドのラ・フェラーリと同じくらい速い。たった2.85秒でゼロから100km/hをクリア。

イタリア語で“サーキット”を意味するピスタと名付けられたこのモデルは、2018年末までにアメリカとヨーロッパに次ぐ重要な市場、中国と日本に投入されることになっている。

エンジンは、ベースとなる488GTBのパワーユニットを慎重に調整して完成した。フォーミュラ1などのレーシング・プログラムで培った最高レベルの技術を反映する488ピスタが、GTBよりも90kgも軽くなるのは、チタン製コンロッドとインコネル製エギゾースト・システムのおかげだ。インコネルとは高熱に強い超合金で、コストはGTBのマニフォールド(多岐管)の4倍もかかるが、重量を減らすことが目的で予算がゆるすならば最適といえる。

このエンジンは本来なら、市販車には不可能だ。レースカーのような瞬間的な加速性とハンドリングは見事。ステアリング・ホイールの上に点灯するアップシフト・ライトが変速のタイミングをドライバーに伝えるしくみだ。このクルマに関するすべてが精密で、リアルタイムに作動する。制御する時におかしな遅れもなく、イヤな驚きもない。こちらがして欲しいことは、即座にやってくれる。



7速パドルシフトとスロットルは直感力があって使いやすく、瞬時に変速する。ブレーキ・フィールは強烈で安定性抜群だし 、ターボラグもほとんどない。おそろしいほど速いけれど、レーストラックではコントロールはしやすく、路面に凸凹の多い公道でも心地よく走る。

でも、ピスタが低速だといかに通勤車にもなり得るかも、マラネッロ郊外をしばらくクルーズしてみてわかった。それに、あの音だ。5000回転以上だと乾いたような、低音が効いた金属的なエギゾースト・ノートはヤミツキになる。まるで魂をくすぐるようだ。

専用ダイヤルをレースモードに合わせると、一番アグレッシブな設定に変わり、ますます獣のように吼える。これこそエンスー天国だ。この状態がもっともレーシングカーに近いセッティングで、すべてのコントロールが敏感になり、反応が素早くなるから集中が必要だ。電子的な補助機能を解除するので、自分のテクニックが要求される。

対照的に、コンフォート・モードで1200回転から7速でアクセルを踏むと、スムーズに加速してくれる。

文=ピーター・ライオン

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