すでに充分滑らかでエアロダイナミックな側面のフォルムではあったが、それにさらに磨きをかけようと、デザイナーたちはF1マシンからヒントを受けたS字ダクトを施して、ノーズの下からの空気を吸い込み、フードの穴から吐き出すようにした。これで、限界での前輪のグリップ力を増し、全体の安定性が向上した。さらにリアスポイラーとデュフーザーの働きで、ダウンフォースが20%増えている。
488ピスタが人間だったら、俳優のヒュー・ジャックマンだ。「レ・ミゼラブル」と「ザ・グレーテスト・ショウマン」の主役のように、488ピスタはたくさんのドラマを舞台に繰り広げ、迫力あるダンスにはスタンディング・オベーションが起き、力強く美しいテノールも見事だ。
一人でステージを沸かせる彼のように、488ピスタは怒濤のパワーで物理の公式を書き換え、オペラの主役のようにそのエキゾーストノートを響かせる。これで虜にならないわけがない。もし、クルマに「トニー賞」があったら、間違いなく受賞するだろう。
ピスタのベースとなる488GTBを評価している人は、そのアップグレードされたバージョンを試す時を楽しみにして欲しい。488ピスタは、どの部分も極限まで磨かれ、美しく、機能的だ。シートは乗る人の腰をしっかり包み、コーナリングでも横滑りさせない。
まさに運転好きは、キアヌ・リーブスが映画「マトリックス」でコンピューターに接続されたような、クルマと一体化する感覚だ。僕はたくさんのスポーツカーやスーパーカーを試乗してきたけど、この488ピスタほど思い通りに走ってくれて、クルマと一体化した感覚を覚えたことはなかった。これこそ、もっとも完成された、完璧にドライバーのためのクルマだと言える。
でも、この夢のドライバーズカーを購入するのに、なんと3940万円が必要だ。貯金のほうはいかがでしょう?
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