「ストーリーを語りながら、何か大切なことを伝えようとするのが好きなんです」。ブラウンは今月、ヒューストンの空港でシカゴ行き便を待ちながらこう語った。シカゴで彼は、母親でシングルマザーのバーシニア・ラトレッジブラウンと共に、全米でも最高レベルの奨学金である「キャメロン・インパクト奨学金」の奨学生に選ばれた15人のための祝賀会に出席する予定だ。
米国では毎年春になると、「アイビーリーグ」と呼ばれる名門大学8校すべてに合格する「アイビー・スウィープ」を達成した高校生が話題になる。しかし、ブラウンはその中でも、獲得した奨学金の金額で抜きんでている。ブラウンが合格した名門校のほとんど(ハーバード大、エール大、プリンストン大、ペンシルベニア大のアイビーリーグ4校と、スタンフォード大、ジョージタウン大、ウィリアムズ大など)は、合格者への経済支援を約束しているが、そうした支援はブラウンには無用だ。
5年前に設立されたキャメロン奨学金は、対象学生が通う大学の4年間の授業料やその他の教育費を支給しており、これには20万ドル(約2200万円)相当の価値がある。ブラウンはさらに、コカ・コーラ財団から2万ドル(約220万円)、ホレイショー・アルジャー協会から2万5000ドル(約270万円)、そしてテキサス州の奨学金5つを獲得した。全部で32の奨学金に応募していたが、自分では「どれも無理だと思っていた」という。
この控えめさと実績の組み合わせこそが、キャメロン奨学金に応募した3000人の中でブラウンを際立たせていたものだったと語るのは、同奨学金プログラムディレクターのエイミー・ルーカスだ。「彼は本当に謙虚で、もの静かで、口調も穏やか。でも私たちは、彼なら全米黒人地位向上協会(NAACP)の会長にもなれると思っています」
ブラウンの実績は多岐に渡る。高校のディベートチームの一員として全米レベルの大会に出場、テニスチームのキャプテンを務め、高校生の国際組織「キー・クラブ」のラマー高校副代表としてホームレスの人々に食事を準備し、全米優等生協会(NHS)にも参加。さらには同校初の「ダイバーシティー(多様性)クラブ」を設立したことで、昨年には「人種関係におけるプリンストン賞」を受賞。ラマー高校国際バカロレア(IB)プログラムでのGPA(学業成績平均値)は4.71だ。