しかし、シタルム川の事例はアジアのごみ問題のほんの一部にしか過ぎない。米国の海洋保護センター(Ocean Conservancy)の2017年のデータによると、中国とインドネシア、フィリピン、タイ、ベトナムの5カ国が海に排出するゴミの総量は、それ以外の世界の国の排出量を上回っているという。
ただし、これはアジアだけの問題ではない。プラスチックごみは世界の環境に打撃を与える。米国は年間3360万トンのプラスチックごみを廃棄しているが、リサイクルされるのはわずか9.5%のみだ。
プラスチックごみは海洋生物や海鳥を殺すだけでなく、魚や貝類に蓄積されて人類の胃袋に入る。ただし、解決手段が全くない訳ではない。プラスチックの排出量をなるべく削減する動きも広がっている。ここではその事例をあげてみよう。
1. ペットボトルの使用を減らす
スウェーデンのスタートアップ「Bluewater」は家庭やオフィス、イベント会場で使える簡易浄水器を開発している。「ペットボトルを用いずに、サステナブルな方法で水が飲める環境を整えていきたい。しかも、美味しい水がどこでも飲めるようにすることが我が社のゴールだ」とBluewater のCEOを務めるAnders Jacobsonは話す。
一日あたり520万本のペットボトルが消費される香港でも、同様な試みは始まっている。香港のランドマークであるマンダリンオリエンタルホテルでは、施設内で「Nordaq」社のフィルターで殺菌した水を顧客らに無料で提供している。
同ホテルのゼネラルマネージャーを務めるArchie Keswickは「この試みを通じ、サステナビリティとラグジュアリーは両立可能であることを示していきたい」と話した。
2. 使い捨て食器の使用をやめる
アジア地域で盛んに利用される、フードデリバリーもプラスチックごみの発生原因だ。香港のスタートアップ「The Kommon Goods」はこの問題に対処するため、企業やホテル向けに環境にやさしい食器の提供を始めた。
同社がリリースした食器セットには竹製の箸や、ナイフやフォーク、金属製のストロー(内部を洗うスティック付き)などが含まれる。
「アジアでは便利さが何よりも大事にされてきたが、その考えを改めるべき時期が来た」とKommon GoodsのAlvin Liは話す。
「海に流れ込むプラスチックごみの量は、年間で数百万トンにも達しているが、その多くが使い捨ての食器だ。この状況が続けば2050年には、ゴミの重量が魚類の総重量を超えるというデータもある」とLiは続けた。
3. レジ袋の使用をやめる
レジ袋はコストも安く便利なものではあるが、生物分解性がなく海洋汚染の原因となっている。台湾政府はレジ袋やストロー、コップなどの使い捨てプラスチック製品を2030年までに全面禁止にする方針を打ち出した。
台湾では既にスーパーやコンビニなどで、レジ袋の無料提供が禁止されている。
一方で中国やベトナム、タイなどでは食品や飲み物を直接、ビニール袋に入れて運ぶのが日常的な光景だ。人々の習慣を変えるためには長い時間が必要だが、この問題を自主的に解決しようとする人々も現れている。
買い物の際にはエコバックなどを持参し、レジ袋は使用しない。また、屋台での食事の際も、自分で食器類を持参する動きも一部で広がってる。