企業数だけでみれば米国がリードを保っているものの、2017年にユニコーンの仲間入りを果たした企業は米国28社に対し中国は22社と、その差は縮まりつつある。昨年、企業価値10億ドルを超えた中国企業にはニュース配信アプリの「今日頭条」をはじめ自転車シェアの「Mobike」や「ofo」、人工知能領域では「センスタイム」などがあげられる。
中国の新興企業は成長スピードが速い点も特徴だ。ボストンコンサルティンググループ(BCG)はスタートアップがユニコーン化するまでの年数を「米国は平均7年。中国は平均4年」とした。
爆発的スピードで進化を遂げる中国のスタートアップの成長の裏側には何があるのか。その答を探るためForbes JAPANは今回、北京や深圳、厦門の3都市の注目スタートアップ5社を取材した。
その結果、見えてきたのは中国の新興企業らは西側メディアが察知するずっと以前に「スマートフォンの次」を見据え、新たなイノベーションを加速させていたことだ。
日本のメディアが中国のテック企業に本格的に注目し始めたのは16年だった。この年の11月、アリババのEコマースの祭典「独身の日」の売上が1日で1.7兆円を突破。それ以降、中国のモバイル決済の普及ぶりや自転車シェアに関するニュースが連日伝えられるようになった。
2014年が転機となった
しかし、近年の中国のスタートアップの勃興は、2014年が節目になったというのが今回の取材から見えてきた事実だ。2014年と言えば、フェイスブックがVRヘッドセット企業のオキュラスリフトを20億ドル(約2130億円)で買収して話題になった年。
当時、南京大学の4年生だったリウ・ジンカンはロシアのウェブサイトで観たVR映像に衝撃を受け、360度カメラの製造を思い立ち翌年、深センで「Insta360」を立ち上げた。
一方でウェアラブルの概念が広まったのも2014年だ。北京本拠の音声認識に強みを持つAI企業「モブボイ」は当初、WeChat向けに音声検索アプリを提供していたが、グーグルグラス向けアプリ開発を始めた2014年に「ウェアラブルこそが次世代の検索プラットフォームになる」と確信。その後、グーグルの「アンドロイドウェア」の公式パートナーに認定され、スマートウォッチ「TicWatch」で世界的評価を確立した。
さらに、17年末にホンダと自動運転分野で提携した香港のAI企業「センスタイム」にとっても、2014年がブレイクスルーを迎えた年だった。香港中文大学が生んだ“大学発ベンチャー”の同社はこの年、ディープラーニングを活用した顔認識プロジェクトで人間の顔認識精度を超える99.15%の認識力を持つアルゴリズムを開発。それを契機に急成長を遂げた。
また、アリババが米ニューヨーク証券取引所に上場を果たし、250億ドル規模の資金を調達。世界最大規模のIPOとして注目を集めたのも14年だった。さらに、深センの「Royole」が世界で最も薄い0.01ミリの有機ディスプレイを発表し、世界の注目を集めたのも14年だった。