「寝る間を惜しんで」は逆効果 成功への近道は十分な睡眠

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トーマス・エジソンやアルバート・アインシュタイン、マーガレット・サッチャー、マルサ・スチュワートなど、数多くの成功者の睡眠習慣についての情報のおかげで、新参経営者たちの間では、1日たった数時間の睡眠でも自分は働けると主張することが流行のようになった。まるで睡眠は「弱虫」のものと言わんばかりだ。しかし、この傾向も現在は変化している。

志の高い職業人の間では、マインドフルネス・栄養・運動への関心が高まっている。英紙フィナンシャル・タイムズに先日掲載された記事では、英国の生産性低下問題の解決策は睡眠にあるとされた。

ハルト・インターナショナル・ビジネススクールのビッキー・カルピン教授(組織行動学)は、こうした変化を歓迎している。先日、著書『The Business of Sleep: How sleeping better can transform your career(眠りのビジネス 睡眠改善はキャリアをどう変身させるか)』を出版したカルピンは、この点を人々に理解させることが非常に難しいと述べた。

カルピンいわく、睡眠の質が低下することで記憶力や注意力、意思決定、創造性が短期的に低下するだけでなく、米国の上位の死因15のうち7つ(心疾患、事故、糖尿病、高血圧症など)にも長期的な影響が及ぶことを示す学術研究が数多く存在するにもかかわらず、英米両国の成人人口の半分近くがいまだに十分な睡眠を取っていない。

しかし、職場で過ごす時間が増えたからといって必ずしも生産性が上がるわけではないことに人々は気づき始め、理想的な流れが生じているとカルピンは考えている。

むしろ、睡眠不足が生産性低下につながる場合もあると、カルピンは指摘する。睡眠不足が大災害の一因となった例としては、1979年のスリーマイル島原子力発電所事故や、1986年のスペースシャトル「チャレンジャー号」爆発事故、同年のチェルノブイリ原発事故などが挙げられる。その他、睡眠不足によってほとんど判別できないようなささいな判断ミスが起きたり、創造的思考力が低下したりして、長期にわたり企業に多大な影響が及ぶ。
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編集=遠藤宗生

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