マイクロソフトがさらに進化する方法
マイクロソフトにはまだ伸び代がある。同社だけではなく全ての企業に共通する進化の機会点は、企業が表面上では重んじているとする価値観と、採用候補者に求める実際の要件の溝を埋めることだ。ナデラは倫理観の重要性について、従業員向けの書簡で次のように述べている。
「私たちは、誠実さ、正直さ、そして順守の精神を指針として意思決定を下せば、倫理的な選択をする可能性が高くなる。自分たちの動機について常に透明性を保ち、失敗から学び、困難な状況に直面した場合は助けを求めることが必要。リーダーやマネジャーには、従業員がためらわず質問し、何かおかしいと思ったら声を上げられる文化を作ることを期待している」
しかしここで、同社の上級ソフトウエアエンジニアの職務内容記述を見てみると、知識やスキルに焦点が当てられている。同社のエンジニアとして持つべき知識やスキルが網羅されているが、「倫理」や「倫理的」という言葉はどこにもない。私は同社の多くの職務内容記述を分析したが、残念なことに、これは全てに共通するものだった。
革新的なリーダーシップとは、顧客や企業が必要とし求めるクールな新製品やサービスを作り出すことだが、それだけではない。成功を収めるため、企業のリーダーは高い人間性を持った人だけを採用しなければならない。この最初の一歩が、企業の価値観を前面に押し出し中核に据えた、職務内容記述だ。またCEOだけでなく、全従業員、マネジャー、Cスイート役員が高い人間性を備えていなければならない。
「倫理」とは言葉だけ
とはいえ「倫理」やそれに関する言葉を職務内容記述に盛り込むだけで、会社が倫理的な人を確実に採用できるわけではない。人間性の高いリーダーシップを作るためには、会社の価値観に根差した職務内容記述を公開することと、採用面接で人格に関する意義のある質問をすることが不可欠だ。
モラルの高いリーダーシップを持つ会社は、長期にわたり財務的な成功を収める確率が高まる。この2つを実践する意思があるかどうかが、会社の未来の業績を左右する。
読者の皆さんには、会社の全職務内容記述をすぐに見直してほしい。知識やスキルだけでなく、企業の価値観を体現した人が採用されることを明確に記述し、採用面接では各求職者が会社の価値観にどれほど熱意を持っているかを評価するため質問する。
これらを効果的にこなすには多くの時間と労力がかかるが、思いやりなどの人間性を真剣に受け止めない求職者は一人として採用してはならない。