一方、マイクロソフトのもう一人の創業者、ポール・アレンも15年前に、1億ドルを投じてアルツハイマー型認知症の研究機関、「アレン脳科学研究所(Allen Institute for Brain Science)」を設立している。アルツハイマー型認知症の研究に対する二人の支援はアプローチが異なるものの、この病気が人間を「破壊」していくさまを直接目の当たりにしてきた経験は、二人に共通している。
アルツハイマー型認知症を患っていたアレンの母は、合併症で亡くなった。アレンはこれまでに、母親の病気を通じて神経変性疾患の治療法確立に対する関心が高まったことについて、繰り返し語っている。ゲイツもまた、親族に認知症を患った男性が複数いることを自身のブログで明らかにしており、「愛する人が病気に知性を奪われ、苦しむ姿を見ること、そして自分にはその人に何一つしてあげられないことの恐ろしさを分かっている」とつづっている。
アルツハイマー型認知症の治療薬の開発に取り組んできた製薬大手の取り組みは、これまでのところ失敗に終わっている。一年ほど前には新薬「ソラネズマブ(solanezumab)」の第3段階の臨床試験を始めていた米イーライリリーが、有効な結果を得ることができなかったと発表している。
新たなアプローチが必要
ソラネズマブをはじめ、開発が進められてきた新薬の多くはいずれも、アミロイド班の形成がアルツハイマー型認知症の発症に関連しているとの考えに基づいており、その形成を防ぐことを目指している。だが、ゲイツとアレンはどちらも、この病気の原因に関する理解を深めるためには、アミロイド班の形成以外の側面に目を向けることの必要性を強調している。
認知症研究基金はこれまでに、神経変性疾患の治療法開発に取り組むスタートアップ7社に投資を行っている。いずれも異なるアプローチを通じた開発を目指す企業だ。ゲイツは各社について、「主流派」ではないが、これまで重視されてきたアミロイド班やその他の考え得る原因への対応を目指す製薬各社の努力を補完するものになると指摘している。