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2018.02.21 17:00

「グレイテスト・ショーマン」が描くダイバーシティへの視線!

『グレイテスト・ショーマン』主演のヒュー・ジャックマン(Photo by Pablo Cuadra/FilmMagic)

『グレイテスト・ショーマン』主演のヒュー・ジャックマン(Photo by Pablo Cuadra/FilmMagic)

まずは、日本の配給会社にとっては耳の痛い話から始めよう。「グレイテスト・ショーマン」の公開前に映画館で流れていた予告編では、“『ラ・ラ・ランド』チーム最新作”という惹句が踊っていた。このコピーに反応して、劇場に足を運んだ人間も少なくはないと思う。実は、自分もそのひとりだ。
 
しかも、作品のホームページには、“『ラ・ラ・ランド』の製作チームが贈る”という見出しもあった。「え、『ラ・ラ・ランド』の製作チーム?」自分のなかでは、それは、監督のデミアン・チャゼルと音楽を担当したジャステイン・ハーウィッツという認識である。
 
ハーバード大学の学生として出会ったこのふたりが、何年越しにも温めていた企画が「ラ・ラ・ランド」ではなかったか。「グレイテスト・ショーマン」のスタッフリストのなかに彼らの名前はもちろんない。具に見ていくと、ベンジ・パセックとジャステイン・ポールの名前が見出せる。
 
確かに彼らは「ラ・ラ・ランド」に関わっていた。しかしこのコンビは後から依頼されて楽曲の作詞を担当しただけであり、とても“『ラ・ラ・ランド』の製作チーム”とは言えない。日本の配給会社のミスリードな誇大宣伝はよく見かけるが、これもその典型。昨年大ヒットした「ラ・ラ・ランド」に引っ掛けて、観客を呼び寄せようという下心が見え見えなのだ。まるで、この「グレイテスト・ショーマン」のモデルである19世紀の興行師P・T・バーナムのように。
 
断言するが、この「グレイテスト・ショーマン」という映画は、そのような変化球を投じずとも、充分に観客をひきつけうる豊かな魅力を持った作品だ。アメリカでは当初、クリスマスシーズン(昨年12月20日)に公開されたが、「物語の薄さ」や「史実との相違」などで批評家から酷評されたせいか、全米3000館以上の封切りにもかかわらず、3日間の興行収入が約880万ドルと、決して良いスタートではなかった。

ところが、作品を観た観客のSNSなどでの口コミにより評判が拡散し、2週目の週末の興行収入は約2倍の1550万ドル、同じく3週目は1380万ドルと、スタート週をはるかに上回る異例のヒットを記録している。現在、公開7週目でも640万ドルで、全米週末興行成績の第5位に位置している。

批評家から辛口の評価を受けたこの作品が、映画館では多くの観客の支持を受けている理由とは何か。

それは、もちろん、映画のサウンドトラックが全米のヒットチャートで第1位に輝いたり、劇中曲「This is Me」が第75回ゴールデングローブ賞の最優秀歌曲賞を受賞したりというその音楽の素晴らしさが挙げられる。ちなみに楽曲は前述のベンジ・パセックとジャステイン・ポールが、この作品では、作詞だけでなく「作曲」まで担当しており、彼らはまた、“『ラ・ラ・ランド』の製作チーム”ではないが、才能豊かなソングライターチームではあるのだ。


楽曲を担当したベンジ・パセックとジャステイン・ポール。第75回ゴールデングローブ賞授賞式にて(Getty Images)

しかし、観客から根強く支持されている背景としては、音楽だけでなく、この作品が隠し持っている、時代にマッチしたメッセージ性にもあると考えられなくもない。
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文=稲垣伸寿

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