─その後、すぐに16番目の社員として入社した。彼らと創業期に一緒に過ごして、どんなことを学んだか。また、今のCEOとしての仕事に生かされていることは。
本当に最初期の、始まったばかりのグーグルを見てきて学んだことは、あんなに小さな、あんなに謙虚な始まり方をした会社が、今のような大きなものになるとは、とても信じられなかった、ということです。そして、小さなアイデアを信じ、「変える力」を信じることが、いかに重要かを学びました。
私たちは、普通ではない時代に生きていると思います。新しいテクノロジーが生まれ、その革新によってまた次の革新が生まれ、さまざまな産業や世界の各地に波及するようになっています。私は、多くの新しいテクノロジーが生まれる瞬間に立ち会いました。
例えば、グーグル・マップです。世界中にカメラを載せた車を走らせ、道を撮影し、画像による世界地図をつくる。今となっては可能だ、と思うかもしれませんが、最初にこのアイデアを聞いた時は、誰もが「馬鹿げている」「クレイジーなアイデアだ」と思うと思います。まさか本当に実現するとは思いもしなかった。
でも、実現したんです。グーグルは今、「プロジェクト・ルーン」というプロジェクトを展開しています。それは、世界のインターネットに接続できない地域にも、気球を飛ばすことで、インターネット・サービスを提供する、というものです。
新しいアイデア、新しいイノベーションがどんどん生まれ、とても速いスピードで育っています。それは、ビジネスや産業の方法を、根底から変えていきます。こういうアイデアを、私は信じてきました。技術的に可能であれば、そのアイデアは育ち、ユーザーによって価値が発見されます。重要なのは、たくさんの企業が関わり、さまざまな形で世界は変わる、そう信じることだと思います。
グーグルやユーチューブでのさまざまな意思決定において、私が重要視しているのは、「5年後に世界はどう変わっているか」ということです。5年後にこうなっているので、その準備のために、今はこういう決断をすべき、という判断をしています。
その決断は時には新しいアイデアを信じること、新しいことに挑戦することを意味し、また、時にはある領域で失敗することも意味します。しかし、それは変化を信じているからで、変化への準備は必要なのです。
なぜ20年でも10年でもなく、5年後の世界を想像するかというと、グーグルはたった20歳の会社で、それより先のことを見越すことは難しいからです。20年前今のような世界を想像することは難しかった。でも、5年前に見通していたことは今、実現している。私たちが理解できる、遠すぎず近すぎない未来が5年後なのです。
スーザン・ウォジスキ◎1968年生まれ。インテルなどを経て99年に16番目の社員としてグーグル入社。広告事業上級副社長としてアドワーズやアドセンスなどの広告や分析商品を担当。14年にユーチューブCEO就任。現在、5人の子どもを持つ母でもある。昨年ヒットしたピコ太郎の動画は、ブレイク前に娘に教えられて知った。「子どもたちから教えられることは色々あるの」。