東北OMは「敷居は低く、されど志は高く」というコンセプトを掲げ、地域づくりやまちづくりに資する人財育成を目指し、年に5回ほど勉強会などのイベントを開催。およそ8年半にわたる活動の中で、元三重県知事の北川正恭氏など、自治体職員の勉強会では異例とも言える大物を東北に招き寄せている。
1000名を超える参加者名簿には、自治体職員だけではなく民間事業所や大学の職員、学生も名を連ねる。自治体職員が主宰する会というのは、どうしても職員同士の集まりになりがちだが、後藤は住民や民間人と積極的に関わりながら、そのつながりの中で新たなアクションを生み出していく。
東北大震災の際には東北OMとしてボランティアバスを走らせ、数ヶ月にわたり被災地でがれきの撤去作業を行うこともあった。その後も、震災のいまを知ってもらうために、宮城県南三陸町でスタディツアーを開催。それをきっかけとなり、山形県酒田市では南三陸町の住民を招いた防災シンポジウムが行われた。東北OMメンバーのつながりを活かして人気バンドを招き、チャリティーライブで釜石市の中学生に笑顔を届けたこともある。
そのような活動もあり、第10回マニフェスト大賞(2015年)において東北OMは優秀復興支援・防災対策賞を受賞し、各優秀賞の中から選ばれる市民グランプリをも受賞した。
後藤の持つ人脈を求めて全国からも声がかかる。2015年10月には、徳島県で行われた防災講演会の講師を、東北OMで培った人脈から紹介をした。岩手県からは、震災当時に中学生だった現役大学生と陸前高田市の語り部。福島県南相馬市からは、はじめての業務を避難所で迎えた市役所職員。そして、防災によるまちづくりの先駆的取組みを実践している仙台市福住町内会の会長。被災3県からさまざまな視点をもつ人材を集めた。
被災地と一括りに言っても、地域や境遇によって見え方は全く違う。それを包括的に伝えられるような組み合わせにこだわっての人選に、後藤の人脈の広さと発想力をみる。
目的は「役所の業務に貢献する」こと
公務員や民間企業の社員が業務外の活動をすると、「結局、それが何につながっているのか?」という批判が出ることもある。だから後藤は、東北OMの活動を通して役所の業務成果を高めることを強く意識している。
全国の地方自治体では、同じような業務を行っているのに意外と情報共有ができていない。特に、都道府県外の情報が共有される機会は少なく、先進事例をキャッチアップすることが容易でない。その状態において、都道府県という枠を超えて多くの志の高い職員が参加し、日々の業務についてノウハウを共有し高め合うことができる東北OMの果たす役割は極めて大きい。これが民間企業同士であれば明確な競合となるため、闊達な情報交換は行いにくい。
昨年12月16日に仙台で行われたイベントでは、役所の実業務で成果をあげた東北6県の自治体職員が集まり、「公民連携」「地方議会改革」「赤字路線の復旧」など、自治体の課題とされる生の情報が業務に関わった職員の観点から共有された。