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2018.01.11 15:00

ふたりの賢者に聞く、「ウェルネス」であるためにすべきこと

(左) 御立尚資 ボストン コンサルティング グループ シニア・アドバイザー(中)谷本有香 フォーブス ジャパン 副編集長兼WEB編集長(右)根来秀行 ハーバード大学医学部 客員教授

(左) 御立尚資 ボストン コンサルティング グループ シニア・アドバイザー(中)谷本有香 フォーブス ジャパン 副編集長兼WEB編集長(右)根来秀行 ハーバード大学医学部 客員教授

現代日本社会において、心と体の健康はどのように実現できるのか。ハーバード大学医学部内科の根来秀行氏とボストンコンサルティンググループの御立尚資氏、日本を代表するウェルネス分野の賢者両名に、本誌副編集長の谷本有香が世界の最先端を聞いた。


谷本有香(以下、谷本):おふたりは昨年の第1回「WELLNESS AWARD OF THE YEAR」(以下「WELLNESS AWARD」)で審査員をされました。振り返ってみていかがですか。

根来秀行(以下、根来):アメリカと違って日本の場合、健康に対する機運がなかなか高まらないのですが、アワードの開催で、こうして健康に頑張っている人がいることを知らしめるきっかけになったと思っています。これがひとつの軸になり、日本全体を盛り上げ、そしてリードしていくようなイベントに成長してほしいですね。

御立尚資(以下、御立):健康な人や企業をイメージするようなマーケティングは、意外と誰もやっていません。健康のためのサービスや商品はありますが、健康そのものを売っている人はいないからです。「WELLNESS AWARD」はその意味ですごく大事で、今後必ず社会にインパクトが出るものと思っています。

谷本:日本のウェルネス分野の現状について、どのようにお考えですか。

御立:日本は基本的には長寿国ですが、最近になってようやく健康年齢というものが言われるようになってきた。ずっと生きていればいいのではなく、健康に生きていかなければならないのだ、と。しかしよく考えると、実はこうなる前に、先輩たちが明治の時代から保健衛生運動をやってきて日本人が健康になり、そして平成の時代になってウェルネス運動をやるという、ちょうどそういうタイミングなのかなと捉えています。

根来:その通りですね。一方で、その仕組みに至るに当たっては、日本には皆保険制度があり、病気になったときに、平等に迅速に対応できるというメリットがある。ただ、ここにきて生活習慣病が多発しています。それは皆保険に甘え過ぎたというところの裏返しでもある。というのも、日本の場合、保険が充実しているので、病気になったら病院に行けばいいというスタンスになっている。

実は予防医学的なことが非常に難しいということなのです。医師は皆保険で病気になった人は自分のテリトリーに呼び込んで、治療するわけですが、そこに入らない健康でいる人に対しては、なかなかアドバイスできる場所を得られないのです。

谷本:日本は世界一の長寿国ですが、ウェルネスとしてはどうなのでしょうか。

御立:世界の人口は今世紀中にピークが来ます。そしてほぼ確実に、22世紀は世界中で人口が減る。裏返すと、今世紀の後半から、インドやインドネシアなどを除き、どの国も高齢化社会に突入する。そのときのモデルは日本がつくるしかない、ということなのだと思うのです。

ただ、健康に関する正しい情報や知識を得ることは意外と難しいものです。そして次に難しいのは、私はよく自分のゴルフに例えるのですが、頭でわかっていてもできないということです。特に健康系は行動が伴うものですので、つまり行動変容が課題になってくる。さらに日本全体の行動変容を起こすために何をするべきか。まずはこういう運動から始めていきたいと個人的には思っています。

根来:習慣は、なかなか言っても変えられるものではありませんね。日々の積み重ねでそうなっているので、まさに御立さんがご指摘のように、行動変容につなげていくことがキーワードになってくる。その際には、ホルモン的な流れや、自律神経の動きなど、体の根本的な制御システムを理解したうえで、ご褒美を与えたり、楽しみながらやったりすると、そういう生活習慣における行動変容が得られるようになると思います。
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文=北島英之 写真=後藤秀二 編集=高城昭夫

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