ビジネス

2018.01.11 15:00

ふたりの賢者に聞く、「ウェルネス」であるためにすべきこと


御立:ある財界リーダーで80代半ばの2人がいるのですが、ものすごく健康で、頭がクリアで、ずっと現役なのです。実はふたりは40年間、競い合って歩いているのですよ。もちろん長距離を歩くことはなく、毎日30分間、時速6キロで歩くというのを続けている。たとえ出張などで遠く離れたところにいても、「昨日やりましたか」と連絡する。

根来:そこですね。競い合うというところが、やはりヒントになりますよね。

御立:「WELLNESS AWARD」も数値化して競い合えば面白くなるかと(笑)。

谷本:今回のアワードにファイナリストとしてランクインした個人や企業について、どのような感想をお持ちですか。

御立:ふたつあって、アスリートを長く続ける方が、こういったアワードの候補に挙がってくるようになった。時代の変化を感じますね。一瞬輝くスターではなく、長く続けることが評価される。これはすごくいいことだと思います。

次に思ったのが、やはり自治体が、あともう一歩のところまで来ているのですが。惜しいものがありました。

谷本:具体的にはどうすればいいのでしょうか。

御立:日本型をつくらなければならないと思っています。例えばアメリカの医療保険は基本的には自分では入るかたちですが、なかには病院と医療保険を両方やっている企業がある。カリフォルニアのカイザー・パーマネンテです。5兆円企業です。

そして多くの医療機器のメーカーは、そこで新しいデバイスの実験をやることができるのです。なぜかというと、株主に当たる人は保険の加入者なのですが、その実験が成功したら保険料が下がる仕組みになっているからです。

谷本:アメリカならではのモデルですね。

御立:スウェーデンでは小児白血病の5年生存率が14%から90%になりました。新薬は使っていません。どんな体重でどんな症状の子どもに、どれくらいの量の薬を何時間おきに与えればどうなるか、といったデータを分析したのです。これは医療が国営なのですべての病院のデータが取れるからできること。そうしたことを日本型でどうするか、ということだと思います。

根来:日本でもこれからは、保険にしてもテクノロジーにしても、そしてまた病気の治療にしても自分で選ぶ時代になっていきます。そして、そんな状況に対応するような取り組みが、「WELLNESS AWARD」に入ってくればうれしいですね。


みたち・たかし◎ボストン コンサルティング グループ(BCG)シニア・パートナー・アンド・マネージング・ディレクター。経済同友会観光立国委員会委員長。国連世界食糧計画(WFP)協会理事、京都大学経営管理大学院客員教授。日本航空を経て、ボストン コンサルティング グループに入社。2005年から16年まで日本代表。

たにもと・ゆか◎ 証券会社、Bloomberg TVで金融経済アンカーを務めた後、2004年に米国でMBAを取得。その後、日経CNBCキャスター、同社初の女性コメンテーターとして従事し、11年以降はフリーのジャーナリストに。フォーブス ジャパン副編集長兼WEB編集長。跡見学園女子大学マネジメント学部兼務講師。

ねごろ・ひでゆき◎パリ大学医学部、 杏林大学医学部客員教授。事業構想大学院大学理事・教授。日本抗加齢医学評議員。臨床ゲノム医療学会理事。専門は内科学、腎臓病学、抗加齢医学、長寿遺伝子、時計遺伝子、睡眠医学など。 渋谷「クオーツメディカルクリニック」でも診療。

文=北島英之 写真=後藤秀二 編集=高城昭夫

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