ビジネス

2018.01.15

なぜショッピングモール運営者は、「地域密着型財団」をつくったのか

熊西乃里子さんが経営する地域密着型ショッピングモール「Bears」

いま、「ファミリー財団」が密かな注目を集めている。元はアメリカで生まれた潮流だが、2008年来、日本でも財団法人が300万円で設立できるようになったことを受け、「家族」で社会貢献をする人々が出現しはじめている。

今回紹介する大阪府門真市の公益財団法人熊西地域振興財団も、そうした新たな「ファミリー財団」のひとつだ。彼らは染色業からショッピングセンターの経営を経て、地域への熱い思いを募らせていったとき、「新たな社会貢献のあり方」を知ったという。代表理事の熊西乃里子さんに話を聞いた。


公益財団法人熊西地域振興財団・代表理事熊西乃里子さん

──「ファミリー財団」として地域貢献を志していらっしゃるという熊西財団ですが、まず事業内容を伺えますか。

主な事業として、年に1回、助成金の公募をさせていただいています。大阪府内で活動していらっしゃる民間のNPO法人や任意団体の方々から、地域活性化につながる取組みをしていらっしゃる団体に助成金を交付しているんです。2012年に一般財団としてスタートし、その後に認定をいただきまして、2014年から公益財団として活動しております。

──シニアの方々が活躍するボランティア団体、経済的な困難を抱えるひとり親家庭の児童に学習支援を行う団体など、助成金を交付している団体の幅は広いですね。

団体さんの活動内容を拝見し、直接お話も聞かせていただいて、きちんと継続性をもっていて、今後とも発展していってほしいと思う団体さんをサポートしています。ほかにもチャリティーコンサートや人形劇を開催したいという取り組みなどに、私どもが経営する「Bears(ベアーズ)」という地域密着型のショッピングモールで場所を無償でお貸しするなど、活動機会を提供するというのも事業のひとつです。

──経営されているショッピングモールも地域貢献を志しているとのことですが、そもそもなぜこのような事業を展開されるようになったのでしょうか。
 
私たちはもともと熊西染色工業株式会社という企業が母体でして、1950年から、工業が盛んだったこの地域で先代が染色業を営んでまいりました。大きな煙突が町のランドマークのようになっていまして、「あの煙突がある方が駅の方角だ」というように、地域の方に愛していただいてきたんですね。



ただ、徐々に工業が衰退し、大手電機メーカーの工場も撤退するなかで、染色業からの事業の転換を考えなければならなくなりました。先代と私たち夫婦で考えをめぐらせるなかで出てきたのが、地元の皆さんの恩返しとしての、地域密着型のショッピングモールだったんです。
次ページ > ショッピングモール経営で気づいた「地域の課題」

文 = 宮田文久

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事