カリフォルニア州最大のガス会社アエーラ・エナジーは、22マイルの油田の真ん中で約2億5000万ドル(正確な数字は明かされていない)をかけたカリフォルニア最大のソーラー発電プロジェクトを始めようとしている。プロジェクトの目玉は、630エーカーの「グラスハウス」だ。農場のグリーンハウスのように見えるが、中には 「グラスボックス」と呼ばれるアルミホイルでできた薄い鏡が、太陽光を集めるためにワイヤーで吊るされている。
太陽が動くにつれて、小さなモーターがワイヤーを引いて鏡の位置を調整する。反射された光は水を運ぶパイプ上に集められ、850mw(メガワット)に相当する蒸気をつくり出す(比較のために言うと、モハーヴェ砂漠のイヴァンパー・ソーラー施設では370mw)。ベルリッジの計画では、太陽光を使って年間1200万バレルの蒸気をつくっていくという。
蒸気は何のためにつくられるのか? ベルリッジは”使い古された油田”であり、石油はもはや自然には流れ出てこない。そこでエリア・エナジーは、貯留岩に蒸気を注入することで石油を取り出そうとしているのである。スチームフラッド法と呼ばれるこの手法は、カリフォルニア州ベーカーズフィールドなどの古い油田で用いられている。得られる液体の95%以上は水分で、そこから石油をすくい取り、残りの水は再び蒸気として使われる。
カーボンの値段
ベルリッジ油田で最も石油がとれたピークは1986年。1日あたり16万バレルだった。今日でも1日に7万6000バレルが採れ、エリア・エナジーのクリスティーナ・シストランクCEOは、今後20年間は同じペースで採れると考えている。同社がソーラー発電企業・グラスポイント(GlassPoint)とともにこのテクノロジーに2億5000万ドルを投資する理由は、こうした油田の寿命に対する期待にある。
前もってソーラー発電技術に大きな投資を行っておけば、あとから効率的にエネルギーを得ることができる。そうでなければ、エリア・エナジーは天然ガスを燃やし続けることで燃料費が嵩み、カリフォルニアの規制当局からも苦情を言われることだろう。グラスポイントの設備を導入することで、年間37万6000トンのCO2排出を削減し、49億立方メートルの天然ガスを節約することができるという。天然ガス1000立方メートルあたりにかかるコストが3ドルだとすれば、年間1500万ドルの節約となる。
カーボンクレジットは測るのが難しい。最近カリフォルニアとカナダの間で行われたキャップ・アンド・トレードプログラム(排出権取引制度のひとつ)では、1トンあたり約14.5ドルの値がついた。値段はさらに高くなると予想されている。となると、ベルリッジでのCO2削減には、年間約500万ドルの価値があるといえるだろうか? シストランクはこうした推測についてはコメントしないだろう。彼女が語るとすれば、キャップ・アンド・トレードプログラムや連邦政府によるその他のインセンティブがあったとしても、このソーラープロジェクトは「経済的にはまったく安定したものではない」ということだ。
では、なぜあえて困難な道に進むのか? それは、ソーラープロジェクトを行うことに対するイメージがいいからだ。カリフォルニア州が、米国の車社会の縮図のような場所であるにもかかわらず、石油会社が「ソーシャル・ライセンス」を維持するのを難しくしているからだ。「カリフォルニアでは、ビジネスをするための調整コストを埋め合わせるために、より大きなパフォーマンスが求められます」とシストランクは言う。「以前のエリア・エナジーには、その余裕はありませんでした」