ソーラーシティは、クリーン・エネルギーの開発から販売までを一貫して手掛ける垂直統合型の事業モデルをとっている。イーロン・マスクも、ソーラーシティの創業者でマスクのいとこにあたるリンドン・ライブとピーター・ライブの兄弟も、バッテリー開発からパネルの設置まで全工程を自前で行いたいと考えている。
太陽電池モジュールを自社開発すれば、マーケティング費や物流費をはじめ、コストを20%程度カットすることが可能だ。屋根に設置する太陽電池のブランドにこだわる消費者は少なく、価格競争力が最も重要となるため、自社開発は理に適っているように思える。
しかし、これには大きな課題がある。それは、量産するだけの販路を確保できなければ価格競争力を維持できず、カナディアン・ソーラーのような大手に対抗できないことだ。これまでのところ、家庭用太陽電池のディーラーは、業界の異端児であるソーラーシティとの取り引きを敬遠している。
必須課題は販路の確保
ソーラーシティは、商業施設用や発電所用の太陽光発電メーカーと取り引きがあるわけでもない。彼らに製品を供給するには、長期間に渡って厳密な審査を受け、信頼を得なければならないからだ。
ソーラーシティが量産体制を維持するためには、家庭用太陽電池の販売をこれまで以上のペースで増やすか、商業施設用や発電所用市場に何とかして食い込む必要がある。しかし、家庭用市場では、ソーラーシティの急成長を支えてきた電力購入契約(PPA)が下火になりつつあり、環境は厳しい。
このままでは、ソーラーシティは競合他社よりも高い価格で販売をするか、余剰在庫を抱える覚悟で量産を続けるしか選択肢がない。同じ問題を抱えて経営危機に陥った中国のインリーソーラー(Yingli Green Energy)のような企業もあれば、ソーラーシティと同じく垂直統合型のモデルを展開しながら、障壁を打破したケースもある。
例えば、サンパワーは商業施設向けにソーラーパネルを製造しながら、他のチャネルを通じて住宅向けにもパネルを販売している。また、ファーストソーラーは、薄型フィルムを用いた独自技術を開発して差別化を図ることに成功した。ソーラーシティも、パナソニックとの提携によって過剰生産を解消できれば大きな展望が開ける。
巨大エネルギー連合誕生への期待
パナソニックは、2010年に当時の大坪文雄社長が「創業100周年を迎える2018年までにグリーンエレクトロニクスの分野で世界一になる」と公約するなど、再生可能エネルギー事業の拡大に力を入れている。2014年には「2019年に連結売上高を10兆円に増やす」ことを目標に掲げたが、経営環境の悪化を受けて2016年3月にこの目標を撤回した。
再生可能エネルギーの分野では、世界10位の太陽光発電メーカーだった三洋電機を2010年に買収し、現在はスマートシティの開発を進めている。しかし、これはまだ実験段階に過ぎず、現時点で最も大きな可能性を秘めているのは、テスラとの提携だろう。
ソーラーシティがバッファローの新工場で生産予定の太陽光パネルは、初期テストで高い変換効率を達成している。ソーラーシティがパナソニックとの提携で順調に販路を開拓することができれば、近い将来新たなエネルギーコングロマリットが誕生するかもしれない。