クリス・アンダーソン ドローン・ビジネスが「アメリカの日常風景」を変える日

illustration by Berto Martinez


(中略)ドローンの商用が注目されているが、じつは市場の90%以上は個人の消費者だ。理由は3つある。まず、単純に個人の消費者の方が企業よりも多い。次に、個人の使用目的が明確なこと。最後に、アメリカでは個人の使用に関する規制がない点が挙げられる。

 意外かもしれないが、ドローンを買うのは、スキーやサーフィン、山登りをするアクティブな人たちが中心。ヘルメットカメラの「ゴープロ」を買う人たちだ。彼らは自分たちの人生を記録し、ユーチューブやフェイスブックで公開したりする。「セルフィー(自撮り)」ならぬ「ドローニー(ドローン撮り)」をする彼らは、ハリウッド映画ばりにドローンで自分を空撮し、友達などにシェアするのである。

 ドローンは、いまはまだ個人ユーザー中心の市場だが、いずれさまざまな分野で使われるようになるだろう。まず、思いつくのが、農業と建設業だ。農業ならば、農薬散布のほか、データを集めることで、最小限の水と農薬で最大量の収穫が期待できるようになる。

 建設業は設計と土木のいずれの面でも可能性を秘める。土木段階で撮影し、マッピングしたデータをデジタルファイルに変換し、設計用CADデータと照合することも可能になる。
確かに、ドローンへの懸念は少なくない。1つは軍事利用だ。もっとも、インターネットもGPSも、兵器開発の過程で生まれたが、役立つから私たちの生活の一部になった。ドローンも同じで、メリットがデメリットを凌しのぐだろう。 2つ目は、「所詮はオモチャ」という偏見である。だが、ゴープロが月に100万台も売れる時代だ。人々の「ストーリーテリング」に対する意欲を過小評価するべきではない。

 3つ目は、商用と規制の問題だ。商業化でいえば、先述した農業や建設業のほか、信号機や標識として使われるだろう。私たちはドローンを日常生活でふつうに見かけるようになるはずだ。すでに、世界はヒトやモノで溢れている。しかし、上空に目を転じれば、そこには何もない。答えは空にある。重力から解放された後の世界について考えるときが来たのだ。

 ドローンはまだ進化するだろう。シリコンバレーには、「安い」「簡単」「汎用性が高い」ものが成功するという法則がある。1984 年に登場したアップルのマッキントッシュもそうだった。当初はできることが限られていたが、利用者たちの手で可能性が広げられていった。PCも、ウェブも、iPhoneもすべて同じだ。
(以下略、)

フォーブス ジャパン編集部(インタビュー)

この記事は 「Forbes JAPAN No.8 2015年3月号(2015/01/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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