集客から味覚分析まで、飲食店を支援するAIテクノロジー

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飲食業界においても、人工知能(AI)の進出が目立ちはじめている。この業界でAIはどのように使われてようとしているのか、その動向をチェックしていきたい。

まず、用途としてまっさきに思い浮かぶのは「AIチャットコンシェルジュ」ではないだろうか。これは、スマートフォンに搭載されている「Siri」や「Google Now」など、「AIアシスタント」に近いサービスだ。もう少し詳しく説明するならば、検索・推薦・翻訳などを通じて、ユーザーが飲食店に足を運ぶための情報および導線を用意する役割を担うものだ。

東京都内を中心に事業展開するデザイナーズホテル「グランベルホテル」は、2017年8月から、外国人観光客向けにAIチャットコンシェルジュ「Bebot」の提供を開始した。Bebotはフロントスタッフに代わり、外国人の質問やリクエストにチャットで多言語対応。飲食店やアクティビティの推薦&予約、道案内などを行う機能が搭載されている。

飲食店の検索およびポータルサイトは日本国内に多数存在するが、外国人が情報収集・推薦・予約を円滑に行えるサービスはまだまだ少ない。Bebotのようなサービス採用は、宿泊施設側にとって「ホスピタリティ向上」というメリットがあるが、インバウンド需要を取り込みたい飲食店側にも恩恵は決して少なくないだろう。

顧客満足度を上げるAI活用例

AIを使って集客を効率的に達成しようという試みには、IT企業・バカンが手掛けるプロジェクトもある。同社は相鉄アーバンクリエイツ、高島屋と組み、複数の飲食店の空き状況が一覧できるデジタルサイネージ(電子看板)を商業施設内に設置。顧客の満足度を計る実証実験をはじめており、今後、段階的に実用化していくとしている。

バカンが構想するソリューションの仕組みは、まず商業施設内に設置されたセンサーやカメラなどから、飲食店内の混雑状況をデータとして収集。そのデータをクラウド&AIで分析し、結果をデジタルサイネージに表示するというものだ。バカンは同プロジェクトを開始した経緯・意義について、次のように発表している。

「商業施設内に点在するレストランやカフェの混雑状況は、実際に店舗へ足を運ばなければ把握できないという課題があります。また、せっかく足を運んでも長時間待たされることがあります。本サービスを活用することで、商業施設や店舗はお客様をお待たせすることが減り、集客効果の拡大や顧客満足度向上が期待できます」

一方、飲食店の重要な集客手法のひとつ「クーポン発行業務」を支援するAIアプリも登場し始めている。代表的なものに、IT企業・タメコが展開するサービス「Tamecco」がある。同サービスは、利用者の嗜好や位置情報など行動パータンを解析。各ユーザーに適した内容・タイミングでクーポンやポイントを発行したい企業を手助けする。すでに吉野家や幸楽苑と業務提携しており、飲食業の集客手法を強化する手段としてますます注目を浴びていきそうだ。
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文=河鐘基

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