「人間関係で体を壊した仲間の話を聞き、開発を考えました」と言うのは、HuRAid(フレイド)の代表、鈴木辰徳である。同社が16年に開発したのは、4カ月後の退職確率を予測するAIエンジンだ。的中率は90%前後。退職予測と聞くと薄気味悪さを感じるが、鈴木はいたって真剣だ。
彼は一時期、「コロプラ」でオンラインゲームのユーザーの行動を分析していた。「毎日ゲームをする人もいれば、プレー開始後、30分で飽きてやめる人もいます。ゲームの内容とユーザーの行動の相関をデータ分析していました」
ゲーム業界で必須のリテンション(客との関係を維持)を、彼は企業の人事で活用できないかと考えた。彼らが開発したAIエンジンが使うのは意外にも勤怠データだけだ。
「月曜の出勤時間の微妙な変化や遅刻、残業、早退、打刻忘れなどから、AIエンジンが7000以上の退職影響因子を作成して予測する」という。
その人の行動の微妙な時間の差異や、同じ会社で過去に辞めた人の特徴と辞めない人の差分から傾向もわかる。ストレス耐性など個人差があるため、因子も人によって違う。そうして4カ月後の行動を見抜いていく。
では、なぜ4カ月後なのか?
「退職理由を早めに見つけ、人間関係など社内の問題点を改善するためです。4カ月後の退職を食い止めて、働き方を変えることができます」
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャーPART2』のように、タイムマシンで未来を見て、現在に戻って軌道修正するというわけだ。
今後、予測を高度化させて、うつ病の予防、適材適所の配属、社内の優秀人材の発掘、チームビルディングなど、「タレントマネジメントシステム」につなげたいという。