世界最先端のレッスン事情と「本質を見抜く力」

機器を使ってスイングを確認するデビッド・レッドベター

ゴルフレッスン界では、ツアー同様にアメリカが最先端の場となっています。ですが、今は世界のどこにいても最新の情報を集めることができますので、極端にアメリカだけが進んでいるという状況でもありません。

近年のゴルフレッスンにおいては、テクノロジーの進化に伴い様々な機器を使うようになっています。スイングをビデオで撮影して細かな動きを見るということは、最低限の常識となっていますが、日本ではまだまだそれすら行っていないレッスンが多く見られます。

現在、アメリカのレッスンの現場でよく見られる機器には以下のようなものが挙げられます。

・ハイスピード撮影が可能なビデオカメラ(飛球線後方、体の正面、背中側、目標から、などの角度から撮影します)

・撮影したスイングを解析するためのソフト(アプリ)

・弾道分析器(最近プロ野球中継やゴルフ中継などでも見られるトラックマンなど)

・スイング中の体重の位置やかかり具合を数値化するもの(マットやプレート状になっていて、その上に乗ってスイングすることで数値を計測します)

・体の使い方を見る機器(ジャケットのように着るものや、単にセンサーを体につけるものなど)

・これも体や腕の使い方を見るための物ですが、センサーを付けてスイングし、肩、腰、腕、肘、膝などの全身のパーツの動きを数値や映像などに置き換えて見られるもの

・パターに特化して、インパクトの軌道(上下左右前後などズレを全てチェックできます)、その安定度、クラブフェースの向き及び安定度などを数値で見られるもの

などです。こういった機器は、スイングを感覚的ではなく、数値で客観的に見ることができるという長所と、その場で何度も確かめられるという利点があります。

しかしながら最先端の機器を使っていても世界に共通する問題があります。それは、機器の数値により
・スイングがどういう状況になっているのか?
・良いとされる位置や数値とズレがどの程度か?
は分かっても、
・そのズレをどの様に修正していくか?どうすれば良い数値へ向かわせることができるのか?
こういった問題への回答がきちんと整理されていないことです。

例えばドライバーのバックスピンの量がどの程度か、スイング軌道のずれ方はどちらにどの程度か、こういった物はすべて数値で出てきますので、スイング軌道がアウトサイドイン軌道になっている、クラブフェースが開いている等という判断は、機器を使い慣れれば誰にでも簡単にできることなのです。

正しい修正方法を知らないと、数値を見てアウトサイドイン軌道だから「もう少しインサイドからスイングする」と言う具合に、単に「意識して」良い数字が出る方向へスイングを変えたり、クラブフェースが開いているからと「腕を返すように」して閉じたり、という方法で修正しようとしてしまうのです。

前々回にお話しした、スイングの問題を直すのに、「意識してズレを無くす」という方法と全く同じだということです。

トラックマンに代表される弾道分析器は、インパクトの瞬間の数値を表しています。その数値を見て、その部分だけ、つまりインパクトだけを修正しようとするやり方も多々あります。つまり世界最先端の機器を使っていても、その結果を利用してスイングを修正する方法には、あまり変化がなく、正しい方法が広まっていないということなのです。
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文=石田昭啓 編集=飛松紅葉

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