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2017.09.26 10:00

経済成長を「GDP」でなく「想像力」で測るという考え方

250785562 / shutterstock.com

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「天然資源は尽きる。しかし、人間の想像力は無限大だ」

そう自信ありげな声で話すのは、MITメディアアーツ・サイエンス准教授のセザー・ヒダルゴ。彼は、経済成長を「想像力」という着眼点から捉えなおす気鋭の研究者だ。

ヒダルゴが開発した「経済複雑性指標(ECI)」は、70年以上の長きにわたり、世界中で用いられてきた「国内総生産(GDP)」に取って代わる新たな経済指標と注目を浴びている。GDP下で、国家は、労働力、土地、資本といった生産要素を活用しながら、生み出した財を輸出し、生産価値を獲得してきた。しかし、GDPの開発者であるサイモン・クズネッツが、1971年のノーベル経済学賞受賞スピーチで「GDPの生産要素は、比較的狭い方法で定義されている」と述べるなど、問題点も明らかになっている。

ECIは、物的資本、人的資本、社会関係資本、土地、労働といった、既存の経済学を構成する要素に、新たな視点を付け加えている。それが、それぞれの国家の経済活動が持つ「複雑性」だ。ECIでは、ある国家の輸出品目の多様性と稀少性の組み合わせにより、国家間の相対的な複雑性を表している。

そして、経済複雑性を評価するために、ヒダルゴは「想像の結晶化」というユニークな概念を考案している。彼が例に挙げたのは2種類の「アップル」。一つは自然界にある果物のアップルで、もう一つはスティーブ・ジョブズが創業したアップル社の製品。

ヒダルゴがいう想像の結晶化の成果物は、もちろんiPhoneやiPadなどを含む後者である。一つのアップル製品を製造するためには、高度なノウハウや知識が詰め込まれている。そのため、輸出額自体が同じであっても、果物のアップルを輸出している国よりもアップル製品を輸出している国の方が経済は複雑で高度であると分類されるのだ。

ヒダルゴは、情報に関しても独自の視点を持っている。まず、想像の結晶化には、知識やノウハウは不可欠であることから、「情報こそが経済成長の本質である」という発想を持っている。そして、情報を「原子や運動エネルギーと同じく、物理的なものだ」と考えている点も特徴的だ。情報そのものに実体はない。それでも、常に知識やノウハウとなって、世界のどこかに存在する「想像の結晶」の一部となっている。

だからこそ、情報はモノではなく、むしろ物理的なモノの配列、すなわち「物理的秩序」だというのが彼の情報観だ。

「人間は知識やノウハウを蓄積して、物理的秩序を生み出す。だから、経済とは、情報をさらに蓄積していく能力を増強するためのシステムだ。だから、国家間の経済的格差とは、想像を結晶化する能力の違いから生まれる」

その観点から、真の貿易収支とは、想像力の輸出量から輸入量を差し引いたもの、すなわち「想像力収支」であると発想を展開。こう考えると、経済的搾取の意味合いも逆転するという。
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文=長谷川リョー、フォーブス ジャパン編集部

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