そんな状況を打開し、人事評価や育成、配置など幅広い人財マネジメントを最適化する可能性を持つものとして、人工知能(AI)やビッグデータ解析、クラウドサービスなどの最先端技術を駆使した「ヒューマン・リソース・テック(Human Resource Tech)」に注目が集まっている。
なかでもすでに多くの企業が活用しているのは、AIを使った採用業務だ。
ソフトバンクは今年5月、新卒採用の選考において応募者をより客観的に、また適性に評価することを目的に、新卒採用選考のエントリーシート評価に日本IBMが提供するAI「ワトソン」を活用すると発表した。日本経済新聞(2017年5月29日付)によると、人事担当者が手作業でシートを確認するのに比べて、時間を75%ほど削減できるという。人事担当者の作業時間や手間を減らすことで新たに生じた時間は、応募者との対面コミュニケーションに費やすそうだ。
判断する主体は人からAIへと変わるが、合否の基準は従来と同じで、またワトソンが基準に達していないと判断した項目については、人がもう一度確認するという作業は残されるという。それでも、一人の人間の具体的な将来に影響する判断をAIが担うという点で、非常に興味深い話だろう。
進む採用支援AIツールの導入
他にも、Institution for a Global Society社のアプリ「GROW」は、朝日新聞社やサイバーエージェントなど大手企業が導入しているサービスだ。全日本空輸(ANA)も同アプリの利用を2018年卒の採用から事務職で必須にしている。
GROWはエントリーシートや面接のパフォーマンスで判断されてきた従来の就職活動を、「潜在能力や学生時代の成長で判断されるようにする、新しい就活マッチングサービス」だという。まず学生側は自らのコンピテンシー(能力・適性)について、周囲の友人や先輩・社会人から日常的に、客観的な評価を受ける。そして企業側が重視するコンピテンシーとのマッチングをAIが担い、適合率の高い学生を企業側に推薦する仕組みになっている。
企業側からすれば、求める能力を持ち合わせた学生を一本釣りできることになるため、新卒採用の効率化が図れる。ちなみに料金は完全成果報酬となっており、1人につき80万円となっている。
ただ作業の効率化は、AIによる人事採用のメリットの一側面に過ぎない。2020年を目途に「人材領域でグローバルNo.1」を掲げている、リクルートホールディングスの例を見よう。