同社は、2015年4月に人工知能研究所「Recruit Institute of Technology」を立ち上げるなど、AIの活用に注目しており、過去のデータを統計処理することで傾向を掴んで将来を予測する計算式(予測モデル)をほぼ全自動で開発できる「DataRobot」というツールも導入している。そして、DataRobotを使った“活躍人材”の予測も行われているという。
つまり、AIを使って将来性の高い人材をピックアップできるということだ。将来有望な人的資源を確保することは、企業の死活問題だろう。入社後に活躍する人材が事前に特定できるとなれば、新卒採用に革命的な変化をもたらすことになることは間違いない。
否定的な声や課題も
人事採用における客観性の確保や効率化、さらには将来性の予測まで行える可能性まであるAI人事採用は、企業にとって非常にメリットが大きい。ただ一方で、批判的な声も少なくない。
ANAのAI採用導入をとりあげた「日本経済新聞」の記事(2017年4月20日付)では、「やっぱり人間にきちんと判断してほしい。情熱や、やる気は人と会話して初めてわかるもの」という大学生の生々しい声が紹介されている。同紙は「こういったアレルギー反応は学生に多く見られた。学生を選抜するための自動的足切りツールというイメージが強いのだろう」と伝えた。
日本特有の問題もある。長らく終身雇用が常識となっていた日本企業の人事採用は、得てして経営者や担当者の経験や勘などの主観的な要素に頼っている点が多い。訓練不足の面接官が「なんとなく人当たりがいい」などと採用を後押しすることもあるのが現実だろう。一口にいえば、人事に関する客観的で蓄積されたデータを持っていない企業が多いのだ。
前出Institution for a Global Society社の福原正大社長も、ポストの入れ替わりに備えて(特に人材の)情報がデータ化されている欧米に比べ、「日本は特にこの点で遅れていて、あらゆる情報が属人的なんです」と指摘している(Lifenet JOURNAL、2016年4月19日)。蓄積されたデータがなければAIも有効性を持ち得ないというわけだ。
いずれにせよ、AIによる人事採用はすでに実用化されており、今後もその流れは拡大していくように思える。企業にとっても応募者にとっても、うわべだけの対策では通じない就職活動が始まる未来は近い。
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