ビジネス

2017.08.05

GINZA SIXのキーパーソンが描く「豊かな消費」の未来図

写真 = 網中健太、吉野洋三


小林:「Where Luxury Begins」というスローガンには、次の新しいラグジュアリーの在り方、「New Luxury」を世界に発信していくという思いが込められています。ただ単に高価なものではなく、人生を豊かにしてくれる真に価値のあるモノや体験。それこそが真のラグジュアリーであると我々は考えています。だから、GINZA SIXに入っていただくテナントの条件としては、まずこういった我々のコンセプトに共感していただけることが第一でした。

つまり、次の世代につながる新しいプロダクトやサービスを生み出していく力、何よりも革新性と先進性があるかどうか。もちろん、実際にはそれだけではありませんが、これが大前提となっています。

栗原:ラグジュアリーという概念も、消費者の中で変質しつつあるのではないかと思います。これまでのラグジュアリーはどうしても一部のブランドの高級品というイメージでしたが、プロダクトに対してサービスの重要性が高まり、サステナビリティ、つまりこれからもずっと価値や品質が継続することや、何より消費者自身の価値観やライフスタイルにあったものであるかどうか。

そうしたことを消費者は重要視し始めており、ラグジュアリーとは必ずしも誰もが価値を認める一部のブランドの商品だけに留まらなくなってきました。いわばそうした“ポストラグジュアリー”とも言うべき現代のマインドを、GINZA SIXに入っているテナントには意識していただきたいと考えています。

山海:LVMHは、長い歴史を持つ数多くのラグジュアリーブランドを有する企業グループですが、どのブランドもそのDNAを守りながら時代に合わせ変化し続けています。常に挑戦し、未来に投資して、これまでにない新しい商品、経験をお客様に提供したいという気持ちでいます。GINZA SIXもそういうブランドの集合体になっていくということですね。

小林:GINZA SIXは、ワールドクラスのクオリティを備える、国内外のお客様をお迎えできる商業施設であり続けることを目指しています。数字的な話をすると、年間売上目標は600億円、目標来館者数は2000万人です。決して不可能な数字ではないと考えています(編集部注:GINZA SIXは開業当日に約9万人、開業18日目の時点で152万人を記録するなど、年間2000万人を超えるペースで集客している)。

さらに、我々リテーラーの立場から言えば、銀座を訪れる国内外のお客様に「銀座と言えばGINZA SIXだ」と思ってもらえる評価が欲しい。GINZA SIXに行けば、ショッピングはもちろん、アートもカルチャーも体験できるし、本物のサービスも受けられる。その評判が広まり、定着すれば、売り上げも来館者数も自ずと上がっていくでしょう。

栗原:世界には星の数ほど様々な施設があるわけですが、GINZA SIXはそれらの施設に関わるすべてのデベロッパー、リテーラー、テナントから目標にされる存在であってほしい。少なくとも、向こう30年間は超えられないような、そんな施設にしたい。そうすれば、消費者は銀座を訪れたときは必ずGINZA SIXに来てくれるようになります。

山海:現代の消費者はどんどん変化し、前に進み続けています。我々はその流れに遅れることなく、変化するニーズに高い水準で応え、ワールドクラスのクオリティを提供し続けていきたいと考えています。銀座は世界的に見ても非常にユニークな街。我々はそんな銀座と共に成長していきたいと思います。


LVMHジャパンシニアヴァイスプレジデントの山海卓氏


小林泰行◎1973年大丸入社、2003年に同社執行役員、札幌店長、東京店長を歴任し、2007年、J. フロントリテイリングの執行役員に就任。2017年より同社取締役会議長を務める。

栗原弘一◎1982年森ビル入社、2000年株式会社ヴィーナスフォート代表取締役副社長、2005年代表取締役社長を経て、2014年森ビル営業本部商業施設事業部執行役員就任。

山海卓◎2006年にLVMHジャパン ディレクター、2017年4月に同社シニアヴァイスプレジデントに就任。2010年からLVMHグループの不動産開発投資会社Lキャタルトンリアルエステートのパートナー/日本責任者を兼任。

文 = 衣谷 康

この記事は 「Forbes JAPAN No.37 2017年8月号(2017/06/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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