しかし飲食業界に、数多の経営者が苦悩する伝統の継承をサラリと行い、次なる挑戦を楽しんでいる2人の若き社長がいる。旭酒造の桜井一宏氏と、麵屋武蔵の矢都木二郎氏だ。“今までにないニュータイプの後継者モデル”となった2人の経営哲学を、5回の連載で読み解いていく。(第1回/第2回/第3回/第4回)
──新たな取り組みを精力的に進めていくためには、日々の生活を充実させ心に余裕を持つことも大切だと思います。プライベートではどのような趣味をお持ちですか?
桜井:趣味と言っていいのかはわかりませんが、出張で色々な地域に行くそれ自体が楽しみです。その道中も色々と見れますし、現地で食事をするのも楽しい。妻には「移動が趣味でしょ」と言われますが、確かにそうかも知れない。たまには家族も一緒についてきてもらったりはします。
矢都木:僕も子どもと出掛けます。小学生なので、いろんなところに連れて行ってあげたいと思って。幼少期の経験は大事ですから。
桜井:そうですね。ただ私の場合、仕事と趣味がずぶずぶに溶けあってしまっている状態で……。
矢都木:僕も子どもとの外出を除けば、完全に仕事が趣味です。それこそ、ライフワークバランスという言葉は、僕の中で上手く消化できなくて。僕にとっては、ライフこそワークで、ワークこそライフ。週に5日仕事に身を費やし、残り2日は逆に仕事を忘れるみたいな過ごし方は、あまり幸せだと思えないんです。
桜井:週に5日ある仕事がすごく楽しければ、1週間ずっと楽しい気持ちでいられますもんね。私の場合は飲みに行くのも業務のうちなので、その意味ではラッキーかなと。
矢都木:そういう状況がベストですよね。家族で外食に行ったら、そこで仕事のスパイスになるような面白いものが見つかる。友達と飲みに行ったら、消費者の動向がわかる。どこまでが仕事でどこからが遊びなのか、微妙なラインです。でも僕にすればそれが楽しくて、幸せなんです。
桜井:日本では、多くの人が仕事を苦に感じている気がします。最近の就活生も、やりがいより条件を重視していると聞きました。