その大統領の資産価値は一見、活況を呈しているように見える。就任式の週末、オープンしたばかりのワシントンのトランプ・インターナショナル・ホテルは招待客で満室になり、宿泊客は4泊で7万ドルを超えるホテル代を支払っていった。報道によれば、トランプ大統領がパームビーチに所有するリゾート「マールアラーゴ」の入会金は1月に10万ドルから20万ドルに跳ね上がったという。
「マールアラーゴ」の資産価値は現在およそ1億7500万ドル。6カ月前と比べて約15%も上昇しており、歴史的重要性が週ごとに高まっているらしい。
しかし、フォーブスは今年、ドナルド・トランプの総資産額を大統領就任前よりも2億ドル少ない35億ドルと推定した。世界の富豪ランキングでも220ランクダウンだ。主な理由は、彼の資産の約40%を占めるNYマンハッタンの不動産価値の変動による。
とはいえ、これほど莫大で複雑な資産を保有する大統領が米国に誕生したことは今までなかった。そして、これほど裕福なパートナーたちを引き連れてホワイトハウスに乗り込んだ大統領も。パートナーたちはトランプが大統領のうちに、これまでのトランプとの取引や彼のブランド力を利用して利益を得ようと目論んでいるのだ。
トランプにそっくりなパートナーたち
就任式前夜、トランプ・インターナショナル・ホテルは厳戒態勢となっていた。バリケードで囲まれ、宿泊客や予約客以外はよほど運がよくなければ入ることはできない。
ホテルのロビーではゴージャスなクラブ特有の光景が繰り広げられている。すぐに目を引くのは近寄り難い雰囲気の謎めいた一団だ。その中のひとりがロビーのバーに近づいていく。そこにはドンペリのボトルがずらりと並び、巨大なアメリカの国旗が飾られている。インドネシアの億万長者でトランプのビジネスパートナー、MNCグループ総帥のハリー・タヌスディビョがビロード張りのソファに座って、誰かとメールのやり取りをしている。
2階のフロアにはトランプの億万長者のパートナー、ラスベガスのカジノ王フィル・ラフィンが1泊1万8000ドルの部屋に宿泊している。ラフィンによればトランプの大統領就任を祝うためにプレジデンシャルスイートを予約したのだが、後で高すぎると文句を言ってもトランプは取り合わなかったという。
結局、ドナルド・トランプのビジネスパートナーのうち14人がトルコ、インド、フィリピンと世界中から駆けつけて大統領就任式に出席することになった。