「トランプ氏の大統領としての職務とこれまでのビジネスの利害はあらゆる点で利益相反となる」と指摘するのは、弁護士グループの一人でジョージ・W・ブッシュ元大統領の主任倫理顧問を務めたリチャード・ペインターだ。
息子たちの型破りな身元調査
非難をかわすため、トランプは1月にトランプタワーの前で会見を開き、大統領の職務と事業を切り離すために、事業の経営権を息子たちに移譲すると発表した。自身が保有する資産を信託に移す、ということは、単に資産を一時的に預けておくだけで、資産を売却して事業から完全に手を引くというわけではない。
また、信託に預けている資産内容を正確に把握することができるため、この方法では完全な白紙委任信託(ブラインド・トラスト)とはならない。
会見から1カ月経ち、エリックは今このジレンマに陥っているように見える。1分前には大統領任期中は父親と事業の話を一切しないと誓ったのに、2分も経たないうちに会社の財務状況を「たぶん四半期ごとに」父に報告すると言い出したのだ。
トランプの息子たちによるパートナー候補の身元調査は父親譲りの型破りなもので、財務分析はさることながら、直感に頼っている部分が大きいという。
エリックは言う。「こういう点でわが社は少し閉鎖的なところがあるかもしれない。たいていのことは自分たちの判断で決める。仕事をする相手を選ぶ第一の基準は“良い人間かどうか”だ。そこを見極めなければならない。書類や契約書をつぶさに調べても、根本的なところで見誤ってしまう可能性があるからだ」。
トランプ・ブランドに引き寄せられるパートナーたちは派手好きで野心的なタイプが多い。就任式に招待されたパートナーたちが権力に近づき、ビジネスチャンスの可能性にワクワクしているのは明らかだ。
多くのパートナーたちは公然とではないにせよ、トランプの支援を続けると約束している。ロシア最大級の不動産会社、クロッカス・グループの創業者アラス・アガラロフは言う。
「トランプ氏が大統領に選ばれると、すぐに皆がお祝いのメッセージを送った。するとお礼のメールがきて、メッセージのやり取りがあった。トランプ氏は仲間のことを忘れるような人間ではない」。