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2017.06.02 11:00

ノーベル経済学者と語る、トランプ時代の世界経済と日本の行方

(左)伊藤隆敏(中央) ジョセフ・E・スティグリッツ(右)高野真


伊藤 : 永久(に利息がつかない)ゼロクーポン債に組み替えるということか。
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スティグリッツ : そのようなものだ。日銀保有の国債の40%以上を日本政府が保有しているのだから、左ポケットに負債を抱え、右ポケットに債権を持っているようなものだ。

伊藤 : だが、政府と日銀のバランスシートを統合すると、日銀の負債(銀行券)が政府の負債になる。

スティグリッツ : 日本の政府債務残高は、対国内総生産(GDP)比で230%だが、ほとんどが国内資金によって買い支えられている。公的部門に保有されている国債を差し引くと、実質的には140%程度だ。永久債に組み替えれば、十分対処可能な範囲である。これは、経済学の基礎理論にのっとった提言だ。
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高野 : 理論上は素晴らしいが、実際には、かなり難しいのではないか。

スティグリッツ : いや、私の提言は人々に自信を与えるだろう。金融にさほど明るくない人は230%という数字に驚くが、方策は多い。
 
ほかにも提言がある。第3の矢に関するものだが、女性を労働力に取り込むための政策が奏功していることに感心している。女性の雇用推進は、サプライサイドや生活の質、社会の特質など、多くの面で実に重要だ。
 
21世紀の産業政策の構築も提言したい。産業政策とは、もはや製造業を意味しない。再生エネルギーや高齢化、グローバル経済との融合などにおける政府の役割を定めるものだ。イノベーション経済に移行しつつある今、日本は21世紀の産業政策を考えるべきだ。

伊藤 : あなたが環太平洋経済連携協定(TPP)に反対なのは知っているが、日本は、米国抜きでTPPを引っ張っていくべきだと思うか。

スティグリッツ : まず、同貿易協定自体を再考すべきだ。当初、米国が(バイオ医薬品の)新薬データ保護期間を12年と主張するなど、TPPの内容がおかしくなったのは米国のせいだ。米国抜きなら、農業保護など、もっと一貫した合理的なやり方で進められる。


ジョセフ・E・スティグリッツ◎コロンビア大学教授。1943年生まれ。クリントン政権の大統領経済諮問委員会委員長、世界銀行上級副総裁などを歴任。2001年、「情報の経済学」に関する研究でノーベル経済学賞を受賞。

伊藤隆敏◎コロンビア大学教授。1973年一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。1991年一橋大学教授、2002年〜14年東京大学教授。近著に『日本財政「最後の選択」』(日本経済新聞出版社刊)

高野 真◎フォーブス ジャパン編集長。早稲田大学大学院卒業後、大和証券、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント、ピムコジャパン社長を経て、2014年から現職。

文=肥田美佐子 写真=OGATA

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