デモ隊と対峙(たいじ)する警察官に、ジェンナーがペプシの缶を手渡すことで対立を解消するというCMの結末に対しては、多くの人が反発。この描写は現実の抗議活動とはかけ離れており、人々の団結を目指す実際の活動の価値をおとしめるものだとの批判が上がった。
ペプシが善意を持ってこのCMを制作したことは明らかだ。問題は、人々の団結を訴えるメッセージが、慎重かつ明確に考え抜かれていなかったこと。USウィークリー誌が伝えた関係者の話によると、ジェンナーは騒動を受けて「ひどい気分だ」と語っている。またCMの創作過程にはジェンナーは全く関与していなかったという。
問題はまさにそこにあった。ファン層が大きいインフルエンサーにとっては、創作過程が重要なポイントになる。インフルエンサーは、共有するコンテンツによってファン層を形成している。ファンやフォロワーが魅力を感じているのは、そうしたインフルエンサーのパーソナルブランドに関するストーリーだ。
そのため、インフルエンサーが自社ブランドのストーリーの中で担う役割に関して、考えや情報を何も共有しないまま大規模な広告契約を結ぶことは、それに合意したインフルエンサーにとっても、主役の重要性を考慮しなかったブランドにとっても間違いとなる。
こうした過ちを犯すブランドはペプシだけではない。では、否定的な反応を呼ぶことなく大手ブランドとインフルエンサーが効果的にコラボするには、どうすれば良いのだろうか。
1. 互いのストーリーから受ける影響を慎重に考える
ペプシのコマーシャルは、批判を浴びそうな要素を排除し、あらゆるタイプの人を登場させようとしたようだが、それが最大の落とし穴となってしまった。多様性の無理強いは、わざとらしさを生む。また、さまざまな選択肢があったはずの主役の人選にスーパーモデルを登用したことで、CMが埋めようとした分断を逆に浮き彫りにしてしまった。
一方で同じペプシコの飲料ブランドであるマウンテンデューのコマーシャルは、インフルエンサーマーケティングの成功例だ。ユーチューブの映像作家、デビン・スーパー・トランプとコラボしたマウンテンデューのCMは、彼に自由な作品作りを認め、すでに確立している視聴者層にうまく合わせることができたため、大成功に終わった。このステップの重要性を忘れれば、致命的なミスとなる。