─航空機を利用する旅行者が世界で急増しているようです。
ビヌープ・ゴエル(以下、ゴエル):特にアジア・パシフィック地域の伸びが大きく、空港利用者数は今後、現在(2015年)の11億人から、20年後には29億人に増えると予測しています。ほぼ3倍です。日本国内をみても3億2,500万人に達する見込みです。
IATAのアナリストの分析では、国内空港関係の雇用は110万人から27%増の140万人に、関係のGDPは950億USドル(約9兆5,000億円、全体の2%)から同じく21%増の1,150億USドルに増大するとみています。
藤原勇二(以下、藤原):日本政府も内閣府が中心となって訪日旅行者の数値目標を打ち出していますよね。15年の時点で1,974万人を30年には6,000万人にまで伸ばし、旅行消費額も3兆4,771億円から15兆円まで増加させるとうたっています。6,000万人を達成している国は、世界をみてもフランスとアメリカ、スペインの3カ国だけです。非常に大きなビジョンだと思います。
─目標達成のために航空産業が果たす役割は大きいのではないでしょうか。
ゴエル:実現のためには空港での混雑解消が必要となってきます。IATAは各国政府と航空会社に2つのことを提言しています。一つは空港施設の拡大です。ただ、これは時間もコストもかかるから、新しいテクノロジーを使って、今ある施設を運用改善していくやり方が現実的でしょう。
もう一つは、旅客自身の“デジタル対応”です。昨今の旅客は既にスマートフォンを利用して予約やチェックインをしますから、それをよりハイレベルにもっていく。重要なのはスピードです。
藤原:そこで考えたのが「ファストトラベル」というプログラムです。目標は、旅客が空港に入り、保安検査場や出国管理などを経てゲート(搭乗口)に着くまでの移動時間を10分以内にすること。もちろんノンストップです。
─空港での待ち時間が減れば、当然滞在時間も減り、混雑が解消するというわけですね。
藤原:プログラムは次の6つに分かれています。(1)自動チェックイン、(2)手荷物の自動預け入れ、(3)ドキュメントチェック、(4)フライト再予約、(5)セルフ搭乗手続き、(6)手荷物の追跡。この一部、またはすべてを満たす航空会社にグリーンやゴールド、プラチナなどのランキングを付与し、全世界的なファストトラベルの実現を図っています。
ゴエル:最も条件を満たしているのはアラスカ航空で96%(10月時点)の合格点です。続いてスカンジナビア航空、ニュージーランド航空、ハワイアン航空の順になります。