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早稲田大学ビジネススクール准教授。連載[グローバル・インサイト]を執筆。

NBCテレビの”The Apprentice”に出演したドナルド・トランプ(2004年撮影、Getty Image)

夏の英EU離脱はあり得ると考えていたが、この秋(昨日)のトランプ米大統領の誕生はあり得ないと思っていた。正直びっくりしたのと同時に、「政治の季節」が今後より加速していくであろうと感じた

開票直後からトランプは底堅く、激戦州のオハイオ、フロリダも取り、接戦というよりはかなり安定した戦いぶりだったと思う。しかし、NY時間の午前2時を過ぎてもメディアはなかなかトランプに当確を出さず、最後はかなり慎重だった。

おもしろかったのは、リベラルなNYタイムズが先に当確を出したにもかかわらず、保守系のFOXニュースがなかなか当確を出さなかったことだ。「トランプの身内と見られていたFOXニュースがおかしいですねえ」と、BBCのコメンテーターは皮肉まじりに触れていた。

それだけ、トランプ支持者もクリントン支持者も、保守もリベラルも、この状況を公式に受け入れてしまっていいのか、という躊躇があったのだろう。

実際、民主党の選挙対策本部は、クリントンに当日の敗北宣言をさせなかった。2000年のブッシュ対ゴアほどの接戦ではないのに、午前2時を過ぎても集まっている支持者に「結果まだ出てないから、今日は解散」と言って延期させた。クリントン自身も民主党も、敗北を受け入れるのに時間が必要なのであろう。

大統領候補討論会で話題となった「トランプが負けを受け入れないのではないか」という問いが、今度はクリントンと民主党サイドに突きつけられている。

リベラルと保守というイデオロギーの区分けも、相当怪しくなってきた選挙であった。民主党の指名争いに参加していたサンダーズの支持者とトランプの支持者は実は結構かぶっていたわけで、つまり、イデオロギー的には真逆にいる人々がある程度トランプの当選を後押ししたのだ。

たまたま米国の知人とこの結果について意見交換するチャンスがあったのだが、彼が言うには、「同じファミリーに2回も大統領職をやらせていいのか」という懸念は、海外から見ている以上に米国内では大きかったという。

ブッシュの場合は、家族と言っても親と子で世代も違ったが、クリントンの場合は“家族の最小単位”の夫婦であり、一組のカップルに最大で16年の大統領権限を与えかねないことに躊躇するのは、自然なことかもしれない。

有権者が認識していたかどうかは定かではないが、僕がクリントンの負けについて感じるのは、夫のビルが大統領在職中(1993年1月〜2001年1月)に進めた金融の自由化が、今回はヒラリーを落選させる遠因になってしまったのではないかという感慨だ。彼が行った金融の自由化がITバブルの崩壊を招き、また、2008年のリーマンショックにつながってしまった。

これらの金融ショックの帰結が米経済にもたらしてきた痛みに、いよいよ国民が耐えられなくなってきたのでないか。ある意味、米国人が大切にしているValues(価値体系)をそれほど尊重してないように見える候補者に一票を入れざるを得なかったのは、経済的に背に腹は代えられなくなった証であろう。パンがValuesに勝ってしまうことは表向きは考えにくい国だったのだが。

文=樋原伸彦

 

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