─日本の対応は遅れているのでしょうか。
ゴエル:実は日本の国内線は世界で最も進んでいる方です。例えばICカードでチェックインから搭乗までできるのは、そんなに例はないはずです。ただ、国際線の場合は目的地の空港でも同様の扱いをしないといけない。その意味では大きな航空会社や空港の対応は大掛かりになり、時間がかかる傾向にあります。
藤原:旅客のデジタル対応は十分なレベルにあるので、メインは荷物になります。具体的には3つの方法があります。第1は、旅客が出発前に自宅で手荷物ラベルを印刷し、それをICチップ付きのパウチに入れて荷物に装着する。第2は、空港にある端末(KIOSK)で印刷する。
第3は、電子タグ。これは紙の手荷物ラベルをデジタル化し、スーツケースの上部に設けたモニターで表示させる。この方法だと、湿気や高温、低温、衝撃、振動といった環境的な要因や、ラベルをはぎ取られるといった事態により重要な情報が失われることがなく、荷物の紛失を減らせることができるのです。この電子タグはファストトラベル普及の大きなカギになるでしょう。
─課題は何でしょうか。
ゴエル:新しい技術に対する制度面での対応です。また、お客様への周知も必要です。次から次へと新しい技術ができてきて、数年前には考えられなかったことが実現されています。今後も革新的な技術ができてきますので、空の旅はさらに安全で快適になっていきます。
─空港は将来、どのようなかたちになっていくのでしょうか。
藤原:考えただけで楽しくなる質問ですね(笑)。少なくとも、もう紙の航空券の時代には戻れませんよ(笑)。電子タグの次は、顔認証システムの高度化でしょう。旅客が空港に入ったら自動的に認証システムが作動する。
預け入れ荷物もわざわざ旅客と一緒に移動する必要はないですよね。国内でゴルフやスキーに行く感覚と同じで、別々に扱う。旅客は完全手ぶらも可能。そうすると、航空機の機内がより広く使えるようになるから、もしかしたらエコノミークラスでフラットシートもありえるかもしれません。まず間違いなく、今よりも旅行が楽しくなりますよ。
写真左から、ユーヤン・キム(アジア太平洋地区空港マネージャー)、鶴岡裕子(アナリスト)、藤原勇二(日本代表)、ビヌープ・ゴエル(アジア太平洋地域本部ディレクター)、ハッセ・ジョージェンセン(ファストトラベルマネージャー)、キャロル・スミクラス(同)。