ビジネス

2016.12.09 17:00

インスタグラムを急成長させた「企業内企業」という環境


インスタグラムの行き着く先は動画だろう。アメリカでは約700億ドルにも及ぶテレビ広告費が徐々にiPhone広告に流れつつあり、企業はこぞってモバイル動画事業の確立を急いでいる。

動画主体のユーチューブやスナップチャットは、他社に先行している。インスタグラムが彼らに追いつくには、慎重な取り扱いが必要だ。つまり、写真を求めて来る5億人のユーザーを遠ざけることなく、動画を推していかなければならない。

共同創業者のクリーガーは、シストロムの慎重さは、「自分がどこへ向かいたいのか」という確固たる意思とでバランスが取れている、と指摘する。インスタグラムの創業当初から、シストロムは大がかりな変更を進めようとするたびに社内の反発に直面してきた。クリーガーは、「動画を追加するというアイデアは、多くの従業員をかなりのパニックに陥れた」と明かす。

シストロムは、動画の追加はリスクのある戦略だと認めながら、崖から落とすつもりはないと社員たちを説得した。クリーガーはシストロムについてこう語る。

「ケビンはプロダクトを進化させるためなら、一見するとわかりにくかったり、すぐには受け入れられなかったりする決断でも下す用意があるんだ」

テクノロジーは変化するが、シストロムの当初からのインスタグラムの構想は変わっていない。つまり、いつ何時でも世界で起きているすべての出来事の視覚的な記録を作り、ユーザーが探索したい地球上のどんな地域へもズームインできるようにすることだ。その目標を達成するため、ユーザー数を現在の2倍の10億人、あるいは3倍まで増やし、フェイスブックにも匹敵する規模のオーディエンスを構築したいと考えている。

「ここまでの規模に成長できたことで、一つの到達点に至ったとは思う。でもそれは、制服に着ける記章のような名誉の印ではなく、僕らの野心の表れに過ぎない。まだ立ち止まるつもりはないよ」


インスタグラム/INSTAGRAM◎2010年創業の写真共有型ソーシャル・ネットワーキング・サービス。フィルターを使って画像の編集をできるのが特徴。12年、フェイスブックの傘下に。利用者数は世界で5億人を超え、日本にも約1,600万人のユーザーがいる。

文=キャスリン・チェイコウスキ、翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN No.29 2016年12月号(2016/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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