ビジネス

2016.12.09 17:00

インスタグラムを急成長させた「企業内企業」という環境


特筆すべきは、インスタグラムがいまだにフェイスブック社内の先端技術開発の一部門として運営されているという点だ。従業員数350人は、ザッカーバーグ率いる1万4,500人の大所帯の3%にも満たない。大企業となったフェイスブックは、身動きが取れにくくなっている。ザッカーバーグは、インスタグラムとシストロムを通じて、“起業家精神”を維持しているのだ。

もともと、インスタグラムは少人数で運営されていた。起業した年の従業員数は6人で、フェイスブックに身売りした時点で13人だった。「5億人のユーザーを抱える企業の大半は、何千人という従業員がいる。僕らは、いまだに数百人レベル。だからこそ、フォーカスしなくてはいけない」とシストロムは言う。

「優先順位を決めることが効率化、そして、成功につながってきたよ」

かねてから、“シンプルにする”ことがシストロムの信条だ。インスタグラムが普及したのは、直観的に操作できるアプリで、使いやすい編集ツールとフィルターを備え、誰でもスマートフォンの写真や動画を“見る日記”に変えられるからだ。インスタグラムのフィルターは、日々の生活を修正された理想の暮らしに変換してくれる。つまり、友人やファンに見せるための個人広告にしてくれるのだ。

今日では、ほとんどすべての著名人がインスタグラムを使っている。世界中のユーザーが毎日、平均21分以上をインスタグラムに費やし、9,500万点を超える写真と動画を投稿している。

インスタグラムに広告を出稿している企業は、昨年6月にはほんの数百社だったが、その数は急増し、現在は20万社を超える。市場調査会社ニールセンが700以上のインスタグラム上の広告キャンペーンを対象に行った調査によると、そのうちの98%で、スポンサー付き投稿の広告想起率(広告を記憶しているユーザーの割合)がオンライン広告の平均値より2.8倍も高かった。

「インスタグラムは、シンプルで視覚的な単一のフィードです。ですから、一つひとつのコンテンツに目が向きます」と、同社のデジタル・ソーシャル戦略ディレクター、マイキー・キランは語る。

「その点、フェイスブックを閲覧していると、あまりに多くのことに気を取られてしまいます」
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文=キャスリン・チェイコウスキ、翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN No.29 2016年12月号(2016/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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