ビジネス

2016.12.09

インスタグラムを急成長させた「企業内企業」という環境

カリフォルニア州メンロパークにあるフェイスブックのキャンパス内でポーズを取るインスタグラムのシストロムCEO。親会社を超えるユーザー数の獲得を目指している。(写真=イーサン・パインズ)

バブルではないかー。フェイスブックが10億ドルで買収したときの懸念は杞憂に終わった。

流行り廃りが激しいSNSの世界で、じわりと台頭してきた写真共有アプリ「インスタグラム」。ユーザー数が3,000人から5億人に跳ね上がった秘密は、その環境とネットワークにあった。


フランシスコ法王(79)は、ソーシャルメディアの時代にブレイクした最も意外なスターかもしれない。ツイッターのフォロワー数は、960万人を数える。そんな法王はより多くの若者に自分の声を届けたいと考え、ある人物に声をかけた。

写真共有アプリ「インスタグラム」の最高経営責任者、ケビン・シストロム(32)だ。インスタグラムは5億人を超えるユーザーを抱えており、そのなかにはアメリカのミレニアル世代の63%も含まれる。

「法王は、『世界各地で会う子どもたちは、必ずしも同じ言語を話さないけれど、スマートフォンで写真を見せてくれる』と話されていたよ。そして、それが最も強力なコミュニケーションの方法である、ともね」とシストロムは振り返る。

シストロムが見守るなか、法王は「@franciscus」というインスタグラムの正式なアカウントを開設。わずか4カ月で、290万人のフォロワーを集めた。ツイッターのフォロワー数の3分の1近くだが、後者を増やすのには約4年もかかっている。

この事実と同じくらい多くを物語っているのが、法王のフェイスブック上のフォロワー数で、こちらはゼロだ。法王は、フェイスブックデビューを果たしておらず、ツイッターで信徒たちにメッセージを送り、インスタグラムで日々の様子を知らせる、というアプローチに満足している。

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOにとっても、それで何の問題もない。彼が2012年に約10億ドルでこの写真共有アプリの買収を決定したときは、“新たなドットコム・バブル”の兆しだという見方が大半だった。しかし買収後の4年間で、インスタグラムは史上有数の急成長プラットフォームとなり、ユーザー数はツイッター(3億2,000万人)、スナップチャット(1億人超)、ピンタレスト(1億人)の合計に相当する。

フェイスブックのユーザー数が飽和の兆しを見せるなか、インスタグラムはこの9カ月で新規ユーザーを1億人も増やした。今年の売上高は前年比の3倍近い15億ドルに達するとの予測があり、18年にはさらにその3倍に伸びて50億ドルに達すると見込まれている(eマーケター予測)。

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文=キャスリン・チェイコウスキ、翻訳=木村理恵

この記事は 「Forbes JAPAN No.29 2016年12月号(2016/10/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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