ビジネス

2016.09.24 17:00

映画もイノベーションの時代へ[映画界のテスラが語る 第1回]


映画業界では配給面(視聴者に届けるプロセス)でも革命が起きている。現在、映画製作者の主な興行収入は劇場であるが、これからの時代はVOD(ビデオ・オン・デマンド)が普及し、映画をインターネット経由で自宅から鑑賞する人が増えることが予想される。

現段階では映画製作者がVODから得る収入は微々たるものだが、いままで映画館に行くことがなかった層にリーチできるという点で、VODには大きな可能性がある。

現在、日本で劇場に足を運ぶ人数は年間約1億6千万人(https://goo.gl/HNyTeS)で日本の人口に匹敵するが、入場者のほとんどがリピーターであるコアな映画ファン、または家族連れ及びカップルなので、大半の社会人は年間を通して劇場へ行っていない。

しかしVODの発展により、劇場やレンタル屋に足を運ばなくても国内外の映画を見ることができる時代へ突入している。それに加えアマゾンやネットフリックスのような会員制のVODは、DVDレンタル等と違いほとんどの作品を無期限で試聴できるため、映画を見るハードルを下げている。

簡単に言えば、国境や場所を問わずより多くの人が映画を楽しめる時代になり、映画コンテンツ自体の需要が国内外でより高まることも予想される。

そしてVODと共に急成長しているのがクラウドファンディングである。クラウドファンディングとはインターネットで広く協賛を集める手法だが、これにより若手の映画製作者が大手の資本なしで映画を制作・配給することが可能となった。

まだ日本ではメジャーな手法ではないが、アメリカではクラウドファンディングで製作費を資金調達したドキュメンタリー映画「イノセンテの描く未来」(原題: Innocente)が2013年のアカデミー賞を受賞した。

映画とクラウドファンディングは相性が良いとされ、その市場も毎年倍以上に成長。2015年の統計(https://goo.gl/9gCYH4)では、クラウドファンディング全体の市場344億ドルに対し、映画の全体市場は383億ドル(https://goo.gl/S9ZAux)となっており、2016年にはクラウドファンディングの市場が映画市場を越す事が予想できる。映画製作者にとって資金調達の方法の一つとして今後より考慮するべきものになっている。

予測:映画産業のこれから

デジタル技術のイノベーションにより、映画産業の競争は今後さらに激化される事が予測できる。しかし、映画産業は衰退に向かっているのではなくVODの発展により国内外での需要が高まり、より多くの映画コンテンツが人々に共有される時代へ突入する。映画製作者はより海外を意識して映画を制作し、国内外でクラウドファンディングを含めた資金調達をすることで新しい需要を発見し産業全体を成長させる事ができるだろう。

1960年代、映画黄金時代の凋落後に突如ハリウッド・ルネッサンスと呼ばれるアメリカン・ニューシネマが現れたように、いま映画産業は新しい風が吹き始めている。日は最も暗いときに昇るように、日本映画の夜明けは近いのかもしれない。

文=木ノ内 煇

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事