アウェーのスーツケースは、初回生産分が即完売になるほどの人気商品となった。
フォーブスの「30アンダー30」(30歳以下の30名)にも選ばれた2人がアウェーを立ち上げたのは2015年。320億ドル(約3兆2,600億円)規模の旅行かばん市場の停滞感にしびれを切らしての起業だった。高品質なスーツケースに1,000ドルも払う必要はないと感じていた。
2人は現代の人々がスーツケースに何を求めているのかを知るために、頻繁に飛行機を利用する800人にインタビューした。その結果生まれたのが、外装はシックなポリカーボネート、衣類の圧縮システムやビルトインのUSB充電器などを備えた225ドルのスーツケースだ。ファッション誌「ヴォーグ」は「完ぺきなキャリーオン(機内持ち込みバッグ)」と評した。
出資者にはジェイ・Zらセレブの名も
コーリーはこのスーツケースが「“スマート”スーツケースや“IoT”スーツケースと呼ばれるとは思っていませんでした」と語る。USB対応の大容量バッテリーを搭載することにしたのは、空港で電源を探すのにいつも苦労するという声がインタビューで上がったためだという。
「空港の床をはいつくばって電源バトルを繰り広げなくてはならないのはおかしなことです。ビルトインの充電器があれば旅が楽になります」とコーリーは説明する。
アウェーは6月にサイズが大きい2種類のスーツケースを発売したが、価格はいずれも300ドル以下だ。シリーズAの投資ラウンドで850万ドル(約8億6,600万円)を調達し、これまでの調達総額は1,100万ドル(約11億円)に上っている。
シードラウンドはワービー・パーカーにも投資しているForerunner VenturesがAccel Partnersと共に主導した。Global Founders Capitalが主導したシリーズAラウンドにはこの2社に加えComcast Venturesも加わり、スターウッドホテルの創業者バリー・スターンリヒトも参加した。
他の出資者にはジェイ・Z、アパレルブランド「ボノボス(Bonobos)」共同創業者のアンディ・ダン、家庭用品ブランド「The Honest Company」の共同創業者ブライアン・リー、高級ソックスブランド「Stance」CEOのJeff Kearlなどが名を連ねる。
アウェーは調達した資金で海外マーケットへの進出を進める。ニューヨークで4か月間設置していたポップアップストアが成功裏に終了し、ニューヨーク、ロサンゼルス、そしてロンドンに今秋店舗を設ける予定だ。近い将来にベルリンなどの都市に出店することも考えているという。さらにアダプターやブランケット、ラップトップケースなどのトラベルグッズの開発も検討している。
「まだ何も決まっていませんが、試験的段階にはあります。私たちはデータやユーザーの話をもとに開発を進める企業です」とコーリーは言う。
2016年のアウェーの売上は1,000万ドル(約10億円)に上ると見られる。コーリーはアウェーの成功について「私やジェン、そして出資者全員が驚いています」と語った。