和製ゲームで世界を狙う
もう一つの大きな発表は、iOS向け新作ゲーム「スーパーマリオ・ラン」だった。12月に配信開始予定で、少なくともしばらくの間はiOS端末のみの独占配信となる予定だ。
アップルはさらに、同じく任天堂のモバイルゲームである「ポケモンGO」のアップルウォッチ対応も発表した。
iPhone 7に搭載されるA10プロセッサーは「家庭用ゲーム機レベル」の性能をうたっており、アップルがモバイルゲーム市場に力を入れ始めたことを示している。
ゲーム情報サイトの中には、アップルの発表会が「ゲーム産業の様相を一変させた」と伝える媒体も出てきている。個人的にはそれは言い過ぎだと感じるが、アップルが任天堂のゲームを使ってゲーム市場に殴り込みをかけるつもりなのは確かのようだ。
日本企業との提携強化
ゲームとモバイル決済の双方で、アップルは日本企業と密接に提携している。
ゲームの分野では任天堂とタッグを組んだ一方で、アップルペイの日本進出に当たっては、ソニーの力を大きく借りた。なお、ソニーはこれまでにも、iPhoneのカメラセンサー技術を提供してきている。
アップルペイでの対応が発表された「FeliCa(フェリカ)」は、ソニーが開発した非接触ICカード技術で、「Suica(スイカ)」を含む多数のシステムに利用されている。アップルはFeliCaに対応することで、通勤から日用品の購入まで、さまざまなシーンで既に利用されている決済システムへの参入を実現する。
こうした提携関係は、アップルが日本に対し講じる2つの異なる戦略を示している。
ソニーとモバイル決済に関して言えば、日本市場のみに焦点を絞った動きであることは明らかだ。日本のモバイル決済市場には、競合相手のグーグルも間もなく参入しようとしているが、アップルはそれに先立ち、ほぼ即座に日本の消費者を獲得できる見込みだ。
任天堂との提携もまた、マリオやポケモンといったキャラクターが既に広く親しまれている日本市場で成功を収めるだろう。だが、ポケモンGOが証明したように、日本のゲームやゲームキャラクターには、世界規模での訴求力がある。アップルは、ポケモンGOの熱狂的人気によって、年末商戦に向けたiPhoneの世界販売台数を伸ばしたい考えなのだろう。そして、次なる世界的なブームを巻き起こすことを狙っているに違いない。