スウェーデンのボルボ・カーはこのほど、自動車安全システム大手のオートリブと合弁で、自動運転車向けのソフトウエア開発に乗り出すことを発表した。ボルボは先ごろ、ライドシェア(相乗り)サービス大手ウーバーと共同で、自動運転車の開発を行う計画を明らかにしている。
スウェーデン・ストックホルムで9月6日に記者会見を行ったボルボとオートリブ両社のCEOによれば、新会社の拠点は同国のイエーテボリに置き、2017年初めにも業務を開始する。当初は両社から100人ずつを派遣するが、数年内に600人以上を雇用したい考えだ。
アクティブセーフティーとセンシングシステムの大手サプライヤーであるオートリブは今後も、主に知覚システムと作動システムに注力する。同社が手掛ける製品には、メルセデスベンツが採用しているステレオカメラなどがある。
ボルボのホーカン・サミュエルソン最高経営責任者(CEO)は、「合弁事業により、両社の関係は従来のサプライヤーとOEM(自動車メーカー)の関係を超えたものになる」と説明。「ボルボとオートリブの双方が、技術に関する完全な透明性を確保することになる」と述べた。
OEM・サプライヤーの関係にある「限界」
自動運転システムが原因で衝突事故が発生した場合などには、OEMやその主要サプライヤーが責任を負うことになる可能性が高い。そして、その際には透明性と、システムがどのように作動していたかに関する知識を双方が持っていることが不可欠になるだろう。
だが、自動運転システムの提供においてサプライヤーに依存しているOEMや、それらにコントロールシステムを提供したいグーグルなどの企業にとって、この点は今後、大きな問題となり得る。
複数のOEM関係筋によると、彼らは数年前からグーグルのシステム導入を拒否してきた。グーグルが自動車メーカーに技術に関する詳細を明らかにせず、「ブラックボックス」の提供だけを希望したためだという。グーグルなどのサプライヤーは、これらのシステムに関する信頼性と安全性に全面的な責任を負う姿勢を示さない限り、実際に市場に打って出ることができないかもしれない。
合弁事業が目指すもの
こうした中で、ボルボとオートリブは新たな合弁事業により2019年にも、共同で開発を目指すソフトウェアプラットフォームの先進自動運転支援システム(ADAS)への供給を開始したい考えだ。また、2021年には完全な自律走行車の市場への投入を目指している。さらに、開発するウエアはオートリブを通じて、ボルボ以外の自動車メーカーにも供給する方針だ。
サミュエルソンCEOとオートリブのヤン・カールソンCEOは、同合弁事業への両社の出資額については明らかにしていない。
どのような状況下でも信頼に足る機能を維持することが可能な自動運転システムの開発は本質的に困難な課題だ。このため小規模企業にとっては、独自での対応がますます難しくなっている。輸送手段に関わる市場においては今後、ボルボとオートリブがこのほど合意したような合弁事業に加えて他社の買収などにより、企業間の垂直統合が推進されていくことになると考えられる。