——『奇跡』、『そして父になる』、『海街diary』の3本では、いってみれば「新幹線」「福山雅治」「同名原作マンガ」という外からいただいたモチーフを、ご自分の手で料理をし、映画作品として完成されました。それを経て、完全にオリジナル作品である『海よりもまだ深く』をおつくりになって、手応えはいかがですか。
是枝 福山さんを新幹線と並べるのはちょっと気が引けるけど(笑)。いちどその3本を経由したので、『歩いても 歩いても』のときとテイストは似ているけれど、だいぶ違うという実感があります。だいぶ大人になったなと(笑)。
『歩いても 歩いても』は、宣伝費を含めて製作費が2億円弱で、全国30館スタートでした。でも興行収入は約1億6,000万円で、配給会社のシネカノンが倒産したから、回収ゼロ、配収ゼロという状況だった。
その『歩いても 歩いても』と似たテイストで、公開規模と宣伝の仕方と劇場展開の仕方を変えて再チャレンジしているのが、今回の『海よりもまだ深く』です。正直、30館が適正だと思わないけど、240館はちょっとあり得ないとも思う(苦笑)。でも、情報誌を見ながら自分の観たい映画を探してくる時代が過ぎ去ったいま、240館開けてもらって、テレビスポットもバンバン打っていかないと、お客さんが映画館まで来ませんから。まあ、今回はリクープ(資金回収)できそうですし、大健闘なんじゃないでしょうか。僕としてはリベンジが果たせたという気持ちです。
——最後に次回作についてお聞かせください。法廷モノにチャレンジするそうですね。
是枝 ええ、プロットはもうできていて、いま脚本を書いているところです。来年撮影、来年公開を目指して。そうなると3年連続公開なので、自分の考えるスピードになるかなと!
——楽しみにしています。今日はありがとうございました。
”世界のコレエダ”が語る映画にまつわるお金の話
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『映画を撮りながら考えたこと』
是枝裕和・著 ミシマ社刊 416ページ 2,400円(外税)