最終的な勝者(あるいは敗者)を決める要素は何か? 筆者が重要だと考える3つのポイントを紹介しよう。
1. 自分自身と顧客を知ること
小売業者は自分たちが何者であるのか、どのようにして自社の顧客のニーズに応えるのかを客観的な視点から考えなければならない。がむしゃらに競争をするのではなく、データを基に決断を下すべきだ。
その点においては、少なくとも今のところはアマゾンがウォルマートよりも進んでいる。アマゾンは、顧客に対してアルゴリズムを活用した手法で特定の製品を薦めたり、リアルタイムのデータを活用した動的価格設定を行ったりすることで知られている。
一方のウォルマートは、より優れた意思決定に必要な大量の、質の高い消費者データを収集できるオンラインプラットフォームがないのが弱みだ。
だがウォルマートは、8月8日にeコマースのスタートアップ、ジェット(Jet)を33億ドル(約3,360億円)で買収。これで、いくつかの問題が解決されるだろう。
ジェットは自社で在庫を保有するのではなく、複数の小売業者を集めた分散型マーケットプレイスの形をとることで、アマゾンよりも低価格を実現している。顧客の買い物データや1回の注文量、よく売れる製品などを考慮し、データをきわめて賢く活用する企業でもある。
今後も開発を続ければ、ジェットはウォルマートのeコマースをよりスマートで、より顧客のニーズに即したものにしてくれるはずだ。
2. サプライチェーンを制する
アマゾンとウォルマートの両社が目指すのは、実店舗での買い物体験と効果的で便利なネット通販の最も優れた部分を融合させた“シームレスな買い物体験”をつくることだ。消費者は買い物に完璧な柔軟性を求めている。
現在両社は、サプライチェーンの拡充をめぐり大接戦を繰り広げている。ウォルマートはおそらく世界一の流通・小売ネットワークを持っており、アマゾンはオンラインのリーダーだ。総合的なサプライチェーンの拡充を図る上で、今は互いに相手にないものを持っている。