米ウォルマート、アマゾンの競合Jet.comを3千億円で買収へ Eコマース強化狙い

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世界最大の小売企業であるウォルマートは、Jet.comの買収に向けて交渉中であることが明らかになった。Jet.comは設立3年目のスタートアップながら、アマゾンに真っ向勝負を挑んでいたEコマース企業だ。関係者の話によると、両社は数回に渡って協議を行ったが、まだ最終合意には至っていないという。

最初にこのニュースを報じたウォールストリート・ジャーナルによると、買収価額は30億ドル(約3,000億円)に達する見込みだという。Jet.comの創業者であるマーク・ロアは元アマゾン幹部で、これまでにベビー用品を専門に扱うDiapers.comなどを運営するQuidsiを創業し、CEOを務めた経歴を持つ。

自身がかつて務めたアマゾンを追撃してきたロアにとって、今回の買収はほろ苦い結果となった。ニュージャージー州ホーボーケン に本拠を置くJet.comは、これまでにベンチャーキャピタルからの出資や銀行借入れで総額5億5,000万ドル以上を調達し、その大半をアマゾンからシェアを奪うためのプロモーションに費やしてきた。潤沢な資金を獲得しながらも、同社はアメリカのEコマース市場において成長の足掛かりを築くことはできなかった。

当面は先行投資により数百万ドル規模の赤字を見込んでいたが、期待していたスピードで顧客数を増やすことができなかったようだ。事態を打開するために会員費を廃止したり、設立14年目の家具通販サイト「Hayneedle」を9,000万ドルで買収するなど戦略転換を図ったが、事態を打開することはできなかった。Jet.comの広報担当者にコメントを求めたが、回答は得られなかった

一方のウォルマートは、この買収によって同社のEコマース事業を強化してアマゾンに対抗すると同時に、実店舗におけるビジネスを補強することが可能になる。ウォルマートの広報担当者は「噂についてはコメントを控える」として言及を避けた。

Jet.comは2013年7月の創業で、積極果敢にアマゾンに挑戦をして注目された。ロアは最初に立ち上げたQuidsiで主に育児用品を販売し、アマゾンと熾烈な価格競争を演じた。2010年に5億5,000万ドルでアマゾンに会社を売却後、ロアはしばらくアマゾンに留まったが、その後退職してJet.comを創業した。

編集=上田裕資

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