ある語学学校担当者はこう話す。
「もちろん本人次第ですが、一般に欧米留学の倍のスピードで上達すると言われます。欧米ならだいたい半年で耳が慣れて、1年でストレスなく話せるようになるとされますが、フィリピンなら3カ月で耳が慣れて、半年で話せるようになります」
子どもの場合はもっと上達が早い。
東京都出身の母親Eさん(30代)はもうすぐ3歳になる娘と、セブ市内の語学学校「ネクシード」に親子留学。入学してまだ1カ月程度だが、「appleやbutterflyって言えるようになって。あと今日は、”Oh, my God”って言うのを初めて聞きました」と、娘の成長に驚く。日本では普通の保育園に通わせ、英語には普段まったく接していないという。
フィリピン留学はもはや、欧米留学の“安いコピー商品”ではない。ほかでは見られないユニークなカリキュラムを提供する学校も続々登場している。
昨年4月にセブ市の中心部に開校した「HLCA(ハルカ)」という日系の語学学校を訪ねた。
英語は中級レベルだという生徒の授業をのぞいてみると、「頸椎(cervical spine)」や「除皮質姿勢(decorticate posturing)」など、難解な専門用語がいくつも飛び交う。
授業についていけずにいると、「脳に障害がある患者がどんな姿勢をとるのか、議論しているところです」と、HLCAの共同経営者で元看護師の海仲由美氏が説明してくれた。看護師なら必須の知識だという。
これは同校の看板コースである「医療英語コース」。海外ボランティアを希望する医師や、海外就職を目指す看護師、さらには英語が必要な製薬会社の社員などが学びにくるそうだ。
かなりニッチな分野に思えるが、「欧米には医療英語を学べる語学学校はほとんどない」と、同校に留学中のベテラン看護師、中川由香さん(36)は話す。
「オーストラリアとかだと短大や看護学校に留学する正規のコースしかない。でも私はその国の看護師資格をとりたいのではなく、ただ医療英語を学びたいだけなので、HLCAを見つけられてよかったです」
医療英語を学ぶのにフィリピンが向いている理由がある。「この国には看護師で英語の先生もしている人材がかなり多い」(海仲氏)ためだ。出稼ぎ大国のフィリピンでは戻ってきた看護師が英語教師になる例も少なくない。実際、HLCAで医療英語コースを担当する教師も全員、元看護師だという。