日本人の「マインド」を変える場所
フィリピン留学は一般にこれまで「初中級者向け」とされてきた。なぜかといえば、「もともと韓国の留学生たちにとってフィリピンは、カナダやオーストラリアに留学する前に、英語に慣れるための場所だった」(前出・呉氏)。そのためフィリピン国内では上級者向けニーズが少なく、上級レベルのカリキュラムをもつ学校自体がほとんどないのだ。
だがそこにも変化が起きつつある。昨年開校したブライチャーは、「生徒の7割がTOEICで700点以上の上級者」(前出・松井氏)だという。
同校を含めてフィリピンで6校に留学経験をもつ三谷匡史さん(33)は言う。
「ほかの学校は基本的に初級者がメインで、僕くらいの中級者になると『自分は英語ができるんじゃないか』と勘違いするようになる。でもブライチャーに来ると、日本ですごく頑張って英語を勉強してきた人がいっぱいいて、刺激を受けました」
ただし、求められる勉強量はかなり多いようだ。
「毎日平均で700〜800ワード、宿題で英語を書かされます。書くためには課題文を読まなきゃいけない。だから寝る暇もないですね」と、TOEICで920点のスコアをもつ小田貴大さん(29)は言う。
同校の特徴は「読み書き」を重視する点。
「会話だと流れてしまうけど、書かせれば文法の間違いがすぐにわかる。あとビジネス英語はスピーキングよりもライティングの方がずっと重要。契約書やメールで稚拙な英語を書くようでは、ビジネスなんてできないですからね」と松井氏は話す。
ほかにも、「グループの会話に割り込む」練習をする変わったクラスもある。筆者も体験させてもらったが、フィリピン人教師らが早口でフリートークをしている中に割って入るのはなかなか難しい。
「日本人はシャイだったり、和を乱すことが嫌いだったりして、グループの会話になかなか入れない。英語力だけでなく、そういうマインドを変えていくことも必要です」と、共同創業者の中西氏は語る。
「マインドを変えるという意味ではフィリピンが最適」と話すのは前出の呉氏(MBA代表)だ。
「いきなりアメリカなどネイティブ圏に留学すると、日本人は委縮して何も話せなくなってしまう。でもフィリピンに来ると、いい意味で日本人の持っていない『適当さ』を学べる。間違えることは恥ずかしくないと、笑えるようになる。それが第一歩です」
飲料大手に勤める持松明弘さん(54)はMBAへの1週間の留学で、そのことをすでに実感した。
「朝から晩まで6人の先生にかわるがわる教えてもらって、英語を話すときの抵抗感が減りました。文法的に正しいかどうかは抜きにして、自分の意見を言う、という意識が高まってきたかなと。それだけでもこちらに来てよかったと思います」
フィリピン留学で世界が少し近くなった。