キャリア・教育

2016.08.28 11:00

TOEIC満点記者が潜入取材! 英語学習の革命が起こるセブ島の今

写真=増谷康

「安かろう悪かろう」とも言われてきたフィリピン留学が近年、目覚ましい進化を遂げ、多くの日本ビジネスマンを引きつけている。英語教育の“イノベーション”が生まれる島、セブを訪ねた。[後編は8/31公開]

「留学先としていろいろな国を調べたんですが、アメリカだと授業はだいたい半日くらいしかない。フィリピンだと安いし、朝から晩まで丸一日勉強できるのでいいかなと思いました」

セブ島の大手語学学校「QQイングリッシュ」に留学中の高橋夏美さん(33)は、3カ月間のフィリピン留学を決めた理由をこう語る。

前職は旅行代理店のツアー販売員。同校では1日8時間のコースをとり、旅行英語のクラスもとっている。将来はハワイで旅行関連業に就きたいという。フィリピンでは今、高橋さんのように転職やスキルアップのために英語を学びにくる日本人が急増している(以下のグラフ参照)。

英語はタガログ語と並ぶ同国の公用語。フィリピン人の英語力はネイティブ並みで、ビジネス英語の通用度に関しては同国が「世界一」だとする調査結果もある。

フィリピン留学のいったい何が魅力なのか。QQイングリッシュの代表、藤岡頼光氏は、「近い、安い、マンツーマン」の3つの特徴を挙げる。

「ロサンゼルスやシドニーなら飛行機で片道10時間くらいかかりますが、フィリピンならたった5時間で行ける。そして留学費用は欧米の半額程度。しかも授業はマンツーマン中心なので、自分のペースで自分に必要な英語を勉強できます」

そして高橋さんも指摘するとおり、授業は朝から晩まで1日6〜10時間くらいあり、どっぷりと英語に漬かる環境が用意されている。フィリピンは日本人が不得手な英語の「実践力」を徹底的に鍛えられる場所として人気なのだ。

だがフィリピン留学には「安かろう悪かろう」というイメージもつきまとう。

藤岡氏は11年前、当時セブで1校しかなかった韓国系の学校へ留学したことがある。

「そのときの学校のホームページに書いてあった売り文句は『3食キムチが食べられます』。生徒の95%が韓国人で、食事も韓国料理ばかり。シャワーはお湯が出なくて、大部屋に10人の集団生活でした。韓国は徴兵制度があるので、彼らは軍隊式の生活に慣れていますが、日本人にはなかなかつらい環境だったと思います」

もともとフィリピンで語学学校を成功させたのは韓国人。1990年代後半のアジア通貨危機で自国の経済が崩壊寸前となり、世界へ出ていく必要に迫られた韓国人は、安価に英語を学べるフィリピンに目をつけた。

そして「外出禁止」「母語禁止」など厳しいルールを敷いた「スパルタ」式と呼ばれる英語の集中特訓スタイルを確立。日本でも徐々にその存在が知られるようになり、日本人留学生も増えたが、食事や生活環境などに馴染めない人は少なくなかったようだ。

だが最近の日本人経営の語学学校に、そんな厳しい面影はほとんど感じられない。
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文=増谷康

この記事は 「Forbes JAPAN No.27 2016年10月号(2016/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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