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2016.08.18

不動産価格下落リスクの見分け方[日本の不動産最前線 第4回]

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前回コラムでは、多くの街において今後、道路一本はさんで不動産の資産性や居住快適性に天国と地獄のような格差が生まれる可能性が高いことを指摘した。

これから本格化する人口・世帯減の文脈において、自治体が「人口密度を保つ」「地価上昇を目指す」とする区域と「そうでない地域」つまり人口密度を維持に努めず、上下水道などのインフラ整備やゴミ収集・除雪などの行政サービスを積極的に行わない区域との線引きを行う。

こうした取り組みはすでに、全国276の自治体で行われているが(2016年3月31日現在)、やがてはほぼすべての自治体でこうした取り組みが始まりだろう。

そのようななか、まず間違いなく区域外に分類される可能性が高いのはどこか。まずは「災害が予想される区域」。集中豪雨や大地震などの際に災害リスクが予想されるところだ。すでに立地適正化計画案を提示している大阪府箕面市はじめ多くの自治体ではほぼ例外なく災害可能性のある区域は除かれている。

例えば崖地の上やその周辺など。例えば土地の起伏の多い神奈川県などにはこうした区域が多い。浸水可能性がある区域も要注意だ。浸水可能性といえば標高の低い低地などが想像されるが、実は標高の高いところであっても浸水可能性は、ある。

東京都世田谷区は標高が概ね30メートルだが、区内の多くの地域で2メートル以上の浸水が予想されているのをご存知だろうか。下図は世田谷区の洪水ハザードマップ。水色で塗られた区域は1-2メートル、青の区域は2メートル以上の浸水が予想されている。

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http://www.city.setagaya.lg.jp/kurashi/104/141/557/d00006073_d/fil/pdf1.pdf

なぜこうした標高の高いところで水害が予想されるのか。実はこうした都市部の場合、雨水の排水処理設備は1時間あたり50-60ミリ程度を想定し整備されているが、想定を超えたときに処理しきれない水が路上に溢れ出すため。

いくら一定の標高があっても、水は低いところに流れ、周辺地に比べて相対的に低いところに水が集中する。昨今の集中豪雨は一時間あたり100ミリを超えることも珍しくない。

こうしたところには現在、住宅が密集しており、水害を予測してあらかじめ基礎を高くするなどの工夫が施されていればまだしも、いわゆる「半地下物件」が建っていたりする。

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半地下物件とは画像のような、地盤面を掘削し地盤面より低いところに1階部分があるような建物のこと。住宅地は建物の高さが制限されていることが多く、そうした地域で3階建ての建物を建てるケースが典型的だ。

これら半地下物件では一般的に、数万円のポンプで排水処理を行うため、浸水リスクはこのポンプの処理能力に依存する。もし壊れたり、停電で止まってしまったら排水不可能になる。

こうしたリスクは現在、多くのケースで価格に反映されていないが、ひとたび立地的性格域から外されてしまえば、不動産としての資産評価、金融機関の担保評価にはそれこそ天と地の開きが出るだろう。
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文=長嶋 修

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