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2016.06.09

ゴーストタウン化!? 日本都市の空き家が社会問題に[日本の不動産最前線 第2回]

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このままいくと我が国の多くの街は文字通り「空き家だらけのゴーストタウン」になる可能性が高い。

住宅市場ではこのところ毎年90万戸ペースで新築住宅が量産されているが、今後アベノミクスが奏功して新築着工が120万戸ペースに回復すれば、2040年に全国の空き家率は43%、60万戸ペースに激減しても36%になるといった恐ろしいシミュレーションがある。

<住宅着工戸数シナリオ別の将来の空き家率推移>
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※出典:野村総合研究所:人口減少時代の住宅・土地利用・社会資本管理の問題とその解決に向けて(下)~2040年の日本の空家問題への対応策案(http://goo.gl/iZtNjp)

都市の空き家率が30パーセントを超えると都市環境が悪化し、居住快適性が著しく低下することが研究者の間で知られている。空き家への侵入、放火などの犯罪の温床になり、何より街が荒れてくるとそこに暮らす人の心も荒む。かつてベルリンの壁が崩壊したとき、旧東ドイツの人々が旧西ドイツに大挙して押し寄せ、東ドイツでは空き家率が30%、40%いった都市が続出、街の荒廃が大きな社会問題となった。

空き家が増加する根本的な原因は世帯数でも人口減でもなく「新築の造り過ぎ」だ。前回お伝えしたように、西欧では多くの国で、10年間の「住宅需要」「住宅建設見込み」を推計し、それを基に住宅政策を決定する。2003年から10年間の各国の世帯数当たりの新築建設をみると、低いのがスウェーデンの5.6%、イギリス7.2%、イタリア8.3%。多くが10%以下で見込む。
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経済調査会資料より長嶋修事務所作成

日本にはこうした目安がない。今も90万戸程度の新築住宅を量産する日本に空き家や増大するのは自明なのだ。適正な新築数はおそらく45万戸程度だろう。イギリスと同じ7.2%なら年間着工は35.9万戸程度。イタリアと同じなら41.47万戸。10%にするなら49.9万戸程度が適正だということになる。

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文=長嶋 修

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